about帝都
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「ザーフィアス?」

聞いた事の無い地名に、皆顔を見合わせた。ただし、ジェイドを除く。

「ザーフィアスとは、街の名前ですか?」

「はい。帝都ザーフィアスです」

「グランコクマ、ではなく?」

「ぐらんこくま……は知らないです」

イオンはその丸い目をパチパチとさせた。
この世界で、帝都と呼ばれる都市はひとつしかない。マルクト帝国首都、水上の帝都グランコクマだ。たとえ帝都、という単語を無視したとしても、『ザーフィアス』という名の街は存在しない。

「もしかして、魔界にあるんじゃないか?」

地上に無いのなら、地下の魔界にあるかもしれない。
ルークの視線を受けて、ティアは首を振った。

「そんなはずないわ。魔界には障気が満ちているのよ。ユリアシティ以外の場所で、人は生きていけないわ」

「そうか……」

再び黒髪の少女に視線が集まり、そして先程から怪しさを爆発させている眼鏡軍人へ視線が移った。

「ジェイド。どういうことか説明してくれよ!」

「そうだよ!この子フレンさんと会えなくて可哀想だよ!」

いつも一生懸命で、つい協力してあげたくなるルーク。そして間抜けな所が可愛い、恋人キアラ。二人に詰め寄られても、ジェイドは眉一つ動かさない。
このまま黙秘を続けるのか――――誰もがそう思った時、頭飾りを揺らしてイオンが前に進み出た。
彼は静かな瞳で長身の軍人を見据えた。そして、

「ジェイド。導師勅命でキアラにマルクト軍第三師団での奉仕活動を強制することも出来ますが」
「実は、フィナ嬢は私が誘拐して来ました」
「え、ええーーー!?」

キアラは抗議と驚き、両方の意味で叫んだ。



***



男はガイ・セシルと名乗った。『オールドラント』という名の星で、使用人をしているそうだ。
星。空に瞬く星には人が住んでいて、自分達と同じように社会を形成し、生活しているのか。
自分の常識を超えた話に、フレンは頭がくらくらとするのを感じた。
フィナが異世界人だと知ったとき以上の衝撃だった。彼女の話を聞いたときは、文化の全く違うテルカ・リュミレースがもう一つある、という認識をしていた。
しかし、今回のオールドラントは違う。彼が住んでいると主張しているのは空に浮かんでいる星だ。数え切れない程多い小さな粒。あの一つ一つに人が住んでいたなんて。
途方も無い話に、頭の処理が追いつかない。
これは、自分ひとりで何とかなる話ではない。
早々にそう判断したフレンは、早速この話を受け入れてくれそうな、頭の柔らかい友人に相談した。

「んで? そのお前の親戚みたいなヤツが異星人だってのか」

ユーリはどっかりと自分のベッドに座り、腕を組んで男を見上げた。
黒い髪と黒い服。さらにその尊大な態度で、とっつきにくそうな印象を男に与えていた。
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