ガイの消失
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「そういえば、今朝から見ないね」
「そうですね」
「気付きませんでしたわ」
「ルーク。よくガイ無しで起きれたわね」
「俺はいつも一人で起きてる!」
「どうしたんだろ……ね、ジェイド知らない?」
話を振られた彼は、眼鏡のズレを直す振りをして表情を半分隠していた。
何か知ってる。その場にいた全員がそう確信した。全員無言で返答を待っていると、彼方を見ていた彼はちらりと皆を見、そしてまた彼方を見てから「尊い犠牲でした」としみじみ語った。
「犠牲ってなんだよ!? ガイは何処だ!?」
「恐らく、こことは違う空の下です」
「抽象的過ぎてわけわかんねーよ!!」
そんな矛先を受け流される会話を続けていると、ついにフィナの涙腺が我慢の限界を越え、決壊してしまった。「フレン、フレン」と保護者の名前を呼びながらしゃくりあげる様を見て、ジェイドを除く皆は胸を痛めた。
「フィナちゃん。フレンさんは私達が探すよ!だから安心して。ね?」
「ええ。すぐに見つけて見せるわ」
「泣かない泣かない☆ほら、いいものあげるから!」
フィナの目の前に、何故だかとても見覚えのあるシルエットが現れた。
ウサギのように大きな耳と、土星のような胴体。そして、ふわふわの毛皮。
「みゅう」
鳴いた。フィナはびっくりして後じさった。そして、正体を見極めようとまじまじとそれを見やる。
大きさもウサギくらいの小動物だった。綺麗な水色と白の毛皮に、円らな紺色の目をしている。小さな手足はとても頼りないというのに、どうやら二足歩行動物のようだ。
この形、どこかで……
フィナは頭を捻った。そして、ある事を思い出してポケットに手を突っ込んだ。
そんな彼女の様子を、ルーク一同は不思議そうな顔で眺めていた。
「あった」
ポケットから引っ張り出されたのは、四角く折りたたまれたハンカチだった。
それを広げると、現れたのは目の前の小動物そっくりのシルエット。
「すごいですの!僕がいるですの!」
「ミュウってグッズ展開してたんだね〜」
「マジ!?イオン様〜早く言ってくださいよぅ!知ってたらアニスちゃん、ミュウをもっと上手く使って……」
「いえ、教団でそのようなことはしていないはず……」
「ほえ?そうなんですか?」
「貴方、それを何処で?」
ティアに尋ねられ、フィナは少しビクリと体を振るわせた。ミュウに釘付けになっていた視線を、恐る恐る彼女に向ける。
「ご、ごめんなさい……怖がらせるつもりはなかったの……」
「……フレンに貰ったんです。多分、ザーフィアスのお店で買ったんだと思う」