inオールドラント
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「……ジェイド。聞いてもいいか?」

赤毛で短髪の青年が、斜め前を歩く軍人に向かって尋ねた。

「お断りします。無駄口を叩く余裕があるなら、魔物を減らすことに力を注いで頂きたいですね」

取り付く島もないほどの即答だった。

「端から無駄だと決め付けんな!」

「おやぁ。どれ程の卓説が拝聴できるのでしょう。期待に胸が膨らみますねぇ」

「テメェ……」

「ルーク。大佐のペースに巻き込まれないで」

激昂しかけた青年―――ルークを、大人びた少女がいさめた。彼女はルークに代わって軍人の前に立つと、毅然とした態度で口を開いた。

「大佐。あの子は一体誰なのですか」

ティアの指差す先には小さな子供がいた。背丈は100cm程。年は五歳位だろうか。長い黒髪に黒い目をしている。そして、見慣れない模様の青いマントを纏っている。幼い顔は不安げに強張っていて、両手は固く握り締められていた。

「ああ。知人から預かったのですよ」

「嘘付け!朝起きたらいきなりいたんだぞ!」

「きっと夜中に預けに来たんぐっ」

「キアラ。今は黙ってて」

キアラ、と呼ばれた女性は、ティアに問答無用で口を塞がれた。ローレライ教団の、なかなか位の高そうな服を着ていたが、扱いはなかなか下だった。

「ほらほら、皆さんが怖い顔をしているから、その子が怯えてしまってますよ」

「どの口がおっしゃいますの。知人から預かった、という割にはほったらかしではありませんか。きちんと面倒を見るべきですわ!」

上品な金髪の女性が声を尖らせた。弓矢を背負っているものの、白くフリルの多いその服装は、あまり戦闘には向かないように見えた。

「ナタリアの言うとおりです。大体、私達の危険な旅に、こんな小さくて可愛い子供を同行させるなんて……」

ティアがジェイドに物申している後ろで、一人の少年が黒髪の子供に話しかけた。緑色の髪をして、白が基調のローブを着ている。彼を取り巻く雰囲気は、穏やかで木漏れ日のようだった。

「こんにちは。僕はローレライ教団の導師イオンです。貴女のお名前を聞かせてもらえませんか?」

「……フィナ」

ちゃんと口を利いてくれた事に安心し、イオンは顔を綻ばせた。

「フィナ。優しい名前ですね。フィナは何処から来たんですか?」

「………」

困った様子で眉を顰め、黙ってしまった。
イオンの隣で様子を窺っていた、ピンクの服の少女がフィナの顔を覗き込む。

「はれ、もしかして分かんないの?」

少女はフィナと同じ黒髪で、髪は高い位置で二つに縛っている。何故か、背中に黄色い猫のような動物のぬいぐるみを背負っていた。まつ毛の長い、大きな瞳をパチパチとさせて子供の様子をじっと見つめる。
フィナは二つ縛りの少女に目をやったが、すぐに視線をイオンに戻した。かなり警戒しているようだ。
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