徴収しました
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『なんだと! しかし、こちらにそんな時間は……』

『では、経過した分の時間を遡って徴収するとしよう』

会話を終えると、金のシャチホコは再び鯨のような声で鳴き、上空に飛び上がった。そして、大きく円を描いて空を泳いだ。

『我が風。もう心配は無用だ。テルカ・リュミレースへ帰った後も、あやつが手出しせぬよう私が見張ろう』

「どうやら、帰れるみたいだな?」

ガイはフレンに向かって右手を差し出した。

「ああ。短い間だったけど、君と会えてよかったよ」

フレンも右手を差し出し、二人はがっしり握手を交わした。

「俺もだ。フィナ嬢と幸せにな」

「ありがとう。君も元気で」

「お二人なら、きっと幸せな家庭が築けますわ」

「そうだね!お似合いだよ!」

ナタリアとキアラから羨望の眼差しが向けられた。
何かがおかしい。フレンは返事を返しながら首を捻った。確かにフレンとフィナは家族同然だが、彼女達の口上はまるで……

「『僕はフィナと一緒にいられる道を選ぶよ。これからずっと』なぁんて、きゃわ〜んv ロマンチック〜v」

「素敵なプロポーズね」

アニスとティアがうっとりと頬を染める。

「ほら、言ったろ! お前隠れるほどのブスじゃねえって」

「言ってない」

「そうか?」

「ミュウも聞いてないですの」

「お前はいなかっただろ」

フィナも平然としている。
実は、彼女にナタリアたちの台詞は聞こえていなかったのだが、フレンはフィナもそのつもりでいるのかと勘違いしてしまった。
プロポーズしたつもりは無かったが、冷静に考えてみるとそうとも取れる台詞だった。
自分の発言には責任を持たなければ。フレンはそう考え、ぐっと拳を握り締めた。
よくよく考えてみれば、今の姿のフィナと一緒に暮らすというのは世間からそういう間柄に取られても仕方が無い。それに、成長したフィナは変わらず愛らしい。もし彼女に「娶ってくれ」と頼まれても嫌な気はしない。仮に男女の関係をとらずに放しておけば、何処の馬の骨とも知れぬ男達が彼女を攫っていこうとするかもしれない。
絶対に嫌だ。他所の男との交際など、断固として認めたくない。
フレンはこの感情が、親としての気持ちなのか、男としてなのか分からなかった。
けれど、フィナを離したくない。その気持ちは本当だった。
フレンは意を決して、口を開いた。

「フィナ」
『そうだ。向こうへ帰れば彼女の姿も元に戻る。安心するがよい』

え、と声を出す前に、視界が白んだ。







「……あれ?」

気がつくと、フレンは自分の部屋の前に立っていた。
何故こんなところにぼんやりと立っているのだろう。フレンは頭に霞がかかったように感じ、頭を振った。
そうだ。自分はこれからフィナと一緒に食堂へ行くのだ。今日は彼女の嫌いな食べ物がメニューに入っている。残さないよう、きちんと見ていなければ。
フレンはドアノブに手を掛けた。

「フィナ、お待たせ」



END


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