二人の預言
[ 19/22 ]
「怪我は無い? ……服、すっかり小さくなっちゃったね」
マントはケープに、アンサンブルはヘソ出しで、足や腕はやたらと露出してしまっている。
正直、フレンにとって目の毒だった。何か肌が隠せるものを与えたかったが、外套の持ち合わせは無い。
「うん。ちょっときついの」
「そ、そう」
意識しすぎてしまって、言葉もぎこちなくなってしまった。ひたすらあどけなく可愛らしかったフィナが、女性らしい美しさを備えて目の前に立っている。その大きな変化に戸惑いが隠せない。心臓は異様に鼓動を打つし、例え目を逸らしたとしても、彼女の姿が網膜に焼き付いて離れない。
フレンは心の中で、こんな事では駄目だと自分を叱咤した。
自分は彼女の保護者なのだ。彼女に対して、こんな感情を持っていいわけが無い。
『まだだ!まだ終わらぬぞ!!』
眠気で倒れたヴァンから抜け出たローレライが、諦め悪く息巻いた。
「いーかげん諦めなよ〜」
『うぬう、神託の盾の奏長風情が! それが私の信者の態度か!!』
「てか、アンタが信仰の対象って態度じゃないし」
『おのれー!!ならば、最後の手段だ!! 私の預言を聞いて驚きひれ伏せ!!』
「いいって。惑星預言ならキアラがいるし、間に合ってる」
アニスとルークに軽く扱われ、オールドラントの人気ナンバーワン精霊(のようなもの)であるはずのローレライは憤慨した。
しかし、矛先を向けられたのは彼らではなく、フレンとフィナの二人だった。
『異界の騎士よ、よく聴け!これがお前達の未来だ!!』
ローレライが朗々と詠み上げた預言は、次のような内容だった。
フィナとフレンは、いずれ道を分かつ事となる
別れは、近いうちに必ず訪れる
そしてテルカ・リュミレースは、人類滅亡の危機に襲われる
『よって、お前達が帰っても良い事など何一つありはしない! おとなしく此処に留まるか、時の娘を置いていくのだ!!』
やたらと自信満々で尊大な態度に、二人は呆然とした。
預言を知らない彼らにとって、ローレライの台詞は希望的観測でしかない。
「えっと、この預言、っていうのは未来を言い当てているんだよね?」
「そうです」
フレンの確認にルークが頷いた。
「失礼だけど、当たるのかな?」
「ほとんどは。少なくとも、俺が生まれるまで外れる事はありませんでした」
驚いたのはフィナだった。
「フレンと離れ離れになるの?」
『そうだ。だからここに…』
「やだ」
フィナが、いつものようにフレンに抱きついた。彼女にとってはクセのようなものだったが、フレンにとっては堪らなかった。
「フィナ! ひ、人前でこういうことは、あまり……!」
「やだ。フレンと離れたくない」
そう言う彼女の目は涙で潤んでいた。