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なんでばれるの。
フィナは焦っていた。まさか、髪の色だけで見抜かれるとは思わなかった。しかも自分でも自覚していない、細かい色味で。
心臓が早鐘を打つ。それは焦りから来ているものでもあったし、幸福な気持ちからでもあった。
返事をせずにいると、フレンは重ねて「フィナなんだろう!?」と問いかけた。
これ以上隠れていても彼をごまかす事はできない。分かってはいたが、今の姿を彼に見せる勇気がフィナには無かった。
今の自分は可愛い子供の姿ではなく、可愛くも美人でも無い、元の姿なのだ。
このままこう着状態が続くかと思われた。が

「光龍槍!!」
「何!?」

どこからともなく光の筋が走った。それはフレンの眼前をかすめ、遠くの丘で爆発した。

「フレン!?」

「おっと、お嬢さんはこちらだ」

思わず木陰から飛び出したフィナを、力強い腕が捕まえた。

『時の娘、お前を異界の騎士と出会わせるわけにはいかぬ』

頭に直接響く男性の声。フィナはビックリして、自分を捕らえている男を振り向いた。
ヒゲがあった。

「……ヒゲ」

「……もっと他に言う事があるだろう」

今度は普通に耳に声が届いた。渋い男性の声。視点を上げると、引き詰め髪のおじさんがフィナを見下ろしていた。
ティアの兄にして現在オールドラントを未曾有の危機に陥れている張本人、ヴァン・グランツだ。

「ヴァン師匠!?」

「兄さん!? どうしてここに!」

ルーク達がただならぬ様子で武器を構えた。

「大丈夫か、フレン!」

「ガイ、彼は一体……」

「色々事情が複雑なんだが、アイツが俺達と敵対してるってことだけは確かだ」

「そうか……」

フレンも剣を抜いた。それを見て、ヴァンはにやりと口元をゆがめた。

「どうやら、貴殿も中々の使い手のようだな」

「その子を返してもらおう」

「そうはいきません」

答えたのはヴァンとは別の人物だった。

「あれ?」

キアラがヴァンの横に立つ人物を見て首を傾げた。キョロキョロと辺りを見回してから、もう一度その人物を見る。

「そんなに見つめられると照れますねぇ。惚れ直しましたか?」

「見損なってんだよ!!何でジェイドがそっちにいるんだ!!」

「最低ですわ……」

「ぶーぶー」

「ジェイド……残念です」

「がっかりですの!」

「やあ酷い言われようですねぇ」

仲間によってたかって非難されても、彼はあっけらかんと笑って見せた。

「ジェイド……お前がジェイド・カーティスか!!」

フレンが鋭い眼光を彼に向ける。彼はそれにも余裕で微笑み返した。

「いかにも。まさかご息女を探しに異世界までやってくるとは。いやはや、おみそれしました」
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