分かるもの
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「キアラの所為らしいですよ」
「私!?」
「貴方が無用なボケをかます所為で、話の進行が阻害され……ついには時間まで」
ああなんてことだ、とジェイドは首を振って嘆いて見せる。
「そんな……」
彼の言う事をバカ正直に受け止めたキアラは、暗い表情で俯いてしまった。さりげなく肩を抱いて慰めようとするジェイドをルークが撃退し、代わりにティアが彼女の肩を抱いた。
「んで、それは本当なのか?」
ガイが苦笑いで話を促すと、ジェイドは眼鏡の位置を直しつつ答えた。
「直前までこの世界の時間を進めていたのは彼女のようです。何らかの原因で時の根源としての力を失い、時間の停滞を招いた」
「この世界の時間を動かしていたのはキアラなのか!?」
テルカ・リュミレースを動かしていたのはフィナの持つ“時”。そして、このオールドラントを動かしていたのはキアラ。
どちらも、一人の人間の力で世界が動いている。
二つの世界の共通点に気付き、ガイは目を見開いて唖然とした。
「ローレライはそう言っています」
「じゃあ、大佐がフィナを誘拐してきたのは、代わりの『時の根源』にするためだったんだ!」
「そのとおりですよーアニスv」
ただのロリコンじゃなかったんだ!
皆、口には出さなかったが、確かに心は一つだった。
フレンは困り果てていた。
先程から謝罪の言葉を重ねているが、当の被害者である女性からは、全く何の反応も返ってこない。
どうしてそんな所に隠れているのか。尋ねてみても、こちらをちらりと見て、そしてまた木の幹に隠れてしまうのだ。
そんなに僕が怖いのだろうか。ガイを見る限り帯刀するのは一般的な事であるようだし、壁を作っているとしたらこの厳しい鎧だろう。
フレンはそう考え、この鎧は決して変なものではなく、騎士団の正装だと説明しようとした。
と、女性の着ている服に目が行った。幹からはみ出ている青いケープ。何故だか、とても見覚えのある物の様な気がした。
見覚えがあるといえば、彼女の黒髪も、とても見知らぬ人とは思えなかった。
日の光で褐色に透ける髪。毎日撫でていた、フィナの髪にそっくりだ。
そうだ、フィナだ。あの子の行方を尋ねた時、あの落ち着いた女性は「あっちの木陰にいる」と確かに言ったのだ。―――――まさか。
「フィナ……なのかい?」
女性の肩がピクリと震えた。
「ち、違います」
返事があった。今まで、何を言っても返答は無かったのに。
フレンはますます確信を強めて言った。
「その髪の色……とっても似ているんだ。黒髪は一括りにされがちだけど、濃紺や紫黒と色々ある。フィナの髪は君と同じ、あたたかい赤褐色なんだよ」