ジェイドの思惑
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「むぐっ!」
ルークは口をふさがれ、ズルズルとその場から引き離された。こんな事をする犯人は分かっている。フィナを誘拐してきた張本人、ジェイドだ。
「おいおい!何やってるんだ!」
駆けつけたガイがすぐさまルークを救出した。意外にもジェイドは抵抗する事無く、パッと彼を解放した。
「なにすんだよ!」
ルークは思いっきり文句を言ってやろうとジェイドをねめつける。が、そこにはいつもの胡散臭い微笑ではなく、冷たさの感じる真面目な顔があった。
「今、フィナ嬢に帰られては困るのです」
「お前も時がどうのって言うのか?」
「ええ」
どうにもふざけた様子は無い。なんだかんだでジェイドはケテルブルクの二人の天才のうちの一人だ。彼の真面目な言葉にはそれなりの信憑性がある。
「誰か朱鷺見たの!?いいなあ!」
「みゅ!ミュウもトキさんに会いたいですの!」
「はい〜フィナちゃんが帰ると、朱鷺が絶滅の危機に……」
「いいから説明しろ!!」
キアラの勘違いに嬉々として乗っかるジェイドをたしなめると、彼はやれやれともったいぶりながらも口を開いた。
「まあ、ほとんどはローレライの言うとおりです。この世界の時は、長い間停滞していました」
「そう……なのか?」
そういわれても、ジェイドを除く彼らの中に、それを自覚している者は一人もいなかった。
「特に変わった事はありませんね」
「ちゃんとお日様は動いてるしぃ」
「それは確かなんですの? 私、とても信じられませんわ」
当然、皆半信半疑だ。
「まあ、私も人間ですので、実際にそれを観測したわけではありません。時が止まれば、私達の記憶する力も止まってしまいますからね」
「なら、なんでそんな事分かったんだよ?」
「人とは違う構造の生物。第七音素の意識集合体ローレライさんからの情報提供です」
「それは……信用できるんでしょうか?」
ティアが心配そうに尋ねた。
「まあ、彼にはキアラをリストラして新たな主人公を据えるという邪な願望がありますが、その件に関しては信用しても大丈夫だと思いますよ」
「主人公? ……ってなんだ?」
「さあ」
「とにかく、時間が止まったら俺達は未来に行けない。時を進めて未来に行くには、フィナ嬢が必要、ってことか」
「そのとおりです。さすがガイ」
「どーも」
「じゃあさ、何で時間は止まっちまったんだ? あと、フィナがいれば時間は進むって、理屈としておかしいだろそれ」
ルークの疑問に、ジェイドは待ってましたとばかりに口角を上げた。