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「私と、結婚を前提に交際して下さい!!」
鼻先に突きつけられた真っ赤なバラ。私の顔の三倍はある花束だ。
舞った花びらが鼻の上に乗っかった。あまりの驚きで、その花びらを払う事さえ思い付かない。
「……俺、疲れてんのかな。流石に結界魔導器無しで生活するってのは無理があったか」
「そ、そうだね。このごろ魔物の討伐依頼ばっかりで、気が休まらなかったもんね!」
ユーリとカロルが現実逃避に走った。ふ〜やれやれ今日も良く働いた、さて宿屋に戻るかとこの場から離れようとしている。
「あら、帰っちゃうの? 他人の求愛現場なんて、めったにお目にかかれるものじゃないわよ?」
ジュディスの言葉で、私はようやく自分の置かれている状況を理解した。
私は、今、告白されている。
帝国騎士団団長であり、父であり、兄であるフレン・シーフォに。