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「お二人なら、きっと幸せな家庭が築けますわ」

「そうだね!お似合いだよ!」

温かい祝福の言葉がフレンを包む。言葉は聞こえるのに、何故か声の主がはっきりしない。なんだか意識がふわふわとして、周囲の状況も頭に入って来なかった。
不意に、フレンは誰かに抱きつかれた。誰だろう、と不思議に思うと、目の前に黒髪の女性が立っていた。艶やかな長い髪が風に揺れ、神秘的な美しさを醸していた。
面識は無いはずだった。だが、何故かとても見覚えがあるような気がする。そして、彼女を見ていると心の奥から愛しさがこみ上げてくる。今すぐこの腕に抱きしめたい衝動に駆られたが、初対面の女性に対してそんな事はできないと、ぐっと堪えた。

「君は……?」

尋ねると、女性はふわりと頬を染めた。まだ少女のあどけなさが残る表情。目を伏せる女性の頭には、長く薄い、白いヴェールがかかっていた。見ると、彼女は裾の長い純白のドレスに身を包んでいるではないか。そう、まるでこれから式を挙げる花嫁のように。
呆然とするフレンの腕に、女性はそのしなやかな腕を絡ませた。
目が合うと、彼女ははにかみながら微笑んだ。その顔に、ある人物が重なって見えた。毎日、フレンが心を砕いているあの子が。

「フィナ嬢と幸せにな」

投げかけられた言葉が予感を確実なものにする。

君は、まさか――――――

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