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「フィナ。大事な話があるんだ。よく聞いて欲しい。
まず知っておいて欲しいのは、僕は君のことを心から大切に思ってるって事だ。娘のように、そして、恋人のように、ね。君は今、間違いなく僕にとって一番大切な人だよ。君がいなくなるなんて、僕には耐えられない。
うん? ああ、そうだね。僕は君に、元の世界に帰って欲しくないと思ってる。残念だけど、これは僕の正直な気持ちだ。
ごめんね。君を困らせるような事を言って。ご両親や友人に会いたいという君の気持ちも分かるんだ。その人たちを大切に思うのも、人として当然の事だ。けれど……どうしてだろうね。それが寂しいというか……なんて言ったらいいのかな。とにかく、すっきりしない気持ちなんだ。君に、僕以外にも大切な人がいるのは当たり前なのにね。
うん、それでね。
この前、ちょっとした事件があったんだ。僕はよく覚えていないんだけど……ある女の人がね、僕と話をしたらしいんだ。彼女は僕のファンクラブに入っていて、僕と言葉を交わした事をメンバーに抜け駆けと思われたらしいんだ。それで、ちょっとした騒ぎが起きてね……
ああ、フィナが気にするような事じゃないよ。僕が言いたかったのは、僕と関わりを持つ事で、君に危害が及ぶかもしれないという事なんだ。
はは、大丈夫。僕もフィナと離れたくないよ。
それで、本題なんだけど……君に、以前のエステリーゼ様のように、城から出ないで生活して欲しいんだ。
……僕は本気だよ。君を守る為には致し方ない事なんだ。君に護衛を付けるのは簡単だけど、それでは職権乱用になってしまうからね。それに、護衛が君に手を出したらどうするんだい。
……冗談だよ。
―――フィナ。君の安全を守る為なんだよ。君が以前のような子供の姿なら平気だったろう。けれど、今の君は年頃の女性なんだ。男性からは性愛対象として狙われるし、女性からは嫉妬の対象として見られる。無用な厄介を呼び込む必要は無いんだ。
だから、ね? 僕の言うとおりにするんだ。
フィナ……そんな言葉を使っちゃいけないよ。全く君は……
僕の話はこれで終わりだ。新しい部屋を用意したから、今日からそこで……
……フィナ。皆には遊びに来てもらえばいいだろう。ユーリならいつでも呼び出せるし、エステリーゼ様は定期的にこちらへ帰っていらっしゃる。寂しがることは無いんだ。
ああ、ユーリは別にいいんだよ。彼は僕の大事なものを傷つけたりしない、信頼の置ける人物だ。
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