ソディアの計画
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私はソディア。フレン隊の副長にして小隊を預かる小隊長だ。
今日は日頃の感謝と労いの気持ちを込め、直属の上司であるフレン隊長にプレゼントを持ってきた。

「浴衣か。随分といい布を使っているね」

「はい。縮布を用いています」

さすが隊長、目が高い。下町出身ながらも品の良し悪しを見分ける眼力を持っている。
そんな博学な所もまた素敵だ。こんな素敵な人の下で働けることを心より誇りに思う。彼こそ帝国騎士の鑑!
折角だからと直ぐに浴衣に着替えてくれる所もサービス精神旺盛で素晴らしい。計算通……いや、フレン隊長の温かな心遣いに感謝感激である。
浴衣で颯爽と現れた彼に、私は言葉を失った。私と彼は如何せん仕事上の付き合いしか無い。故に、彼の鎧以外の服装というのは私にとって非常に希少価値の高いものであって、それだけでも驚嘆に値する。だというのに今の彼は私が特注した浴衣を纏い、普段は決して見せることのない肌を露わにして(無論、下品などではない。むしろ爽快)はにかんだ笑顔を浮かべている。

完璧だ。これこそ私が望んだ光景。お疲れ様わたし。

そう。フレン隊長へのプレゼントと銘打ってはいるが、何を隠そうこの浴衣は『頑張っている私へのご褒美』。フレン隊長の浴衣姿を見れば、遠征の疲れも吹っ飛ぶというもの。
本当にこの人の部下でよかった。
私の隣に佇む騎士団の妖精フィナも、彼に眼が釘付けだ。小さくても女の子ね。
さて、最後の詰めだ。私はもう一つ箱を取り出した。フィナがつぶらな瞳で見上げてくる。その顔には興味津々、と大きく書いてある。
私だけ癒されるのは申し訳ない。日頃の感謝と労いの気持ちを込めたというのは嘘ではない。彼を補佐する副官として、彼の好みは把握している。何が好きで、嫌いか。なにをどうすれば喜ぶか。その知識を、今こそ発揮する時!

「―――ッ!!! す、素晴らしいよソディア!!」

「喜んでいただけて恐縮です!!」

「澄明の刻晶のように涼やかで上品、それでいてハルルの花のように可憐……ああ、適切な言葉が思い浮かばない!!」

顔を赤くして狂喜する上司を見、私は役目を終えた充足感で息を吐いた。我々の視線の先、いや、偶然通りかかった騎士をも巻き込んで視線を独り占めしているのは、フレン隊長の2分の1サイズの浴衣を着た夏の精だ。
ベースの青の滝縞は同じだが、その上に赤い金魚が泳いでいる。後ろで大きな蝶結びになっている赤い兵児帯は、本当に妖精の羽のようだ。髪はいつぞやのフレン隊長の要望を聞き、ツインテールでまとめた。我ながら気が利いている。

「とっっっても可愛いよ! フィナ!!」

まるで親子か兄妹のような二人のペアルックを見て、私は再び幸せな気持ちになるのだった。



めでたしめでたし。
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