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申し込みの名前は、

「フレンさんの娘さん、名前なんて言いましたっけ?」

「フィナだよ。君と同じ綺麗な黒髪でね、とても可愛いんだ。それにとってもいい子なんだよ。さっきも―――」

「じゃあ、その名前お借りしますね」

「えっ」

とやって、問題なく本名を書くことが出来た。
偽名で参加するなんて〜云々とフレンが文句を言うかとも思ったが、「そんなに僕に名前を知られるのが嫌なのか」と落ち込むのに忙しく、何も言われなかった。

一回戦目の相手は『凛々の明星』を思い起こさせる、よろず屋系新興ギルドだ。
遺構の門風の女の子に、盗賊風と戦士風の男。三人はスクラムを組むと、「我等の名を知らしめるぞー!」と叫んでいた。宣伝目的の参加のようだ。

「君は下がっていて」

フレンが前に進み出る。騎士団長仕様の剣と盾は凝った意匠が施されていて、野生味の強いギルドの人々と比べて場違い感が半端じゃない。彼の登場に、観客席にもどよめきが走った。

「おい……あれ、伝説の無敗チャンピオンじゃねーか……」

「まさか!? チャンピオンっつっても個人戦の話だろ!?」

「おいおい、団体戦にたった二人で出てどーすんだ!? しかも、一人は明らかにシロートじゃん!!」

で、伝説の無敗チャンピオン!?
驚いてフレンを振り向くと、彼は「ばれちゃったね」とはにかんだ。

「騎士団の任務で出場した事があってね。まさか覚えてる人がいるなんて」

相手の三人も、元チャンピオンという言葉を聞いて呆然としていた。が、すぐにリーダー格の戦士風の男が

「ええい! いくらチャンピオンでも、こっちは三人なんだ!! 三人寄れば文殊の知恵!! 行くぞ皆!!」

と檄を飛ばした。それに後ろの二人も「おお!!」と応える。
その熱の冷めないうちに、場内アナウンスが響いた。

『気合たっぷりだな野郎ども!! いくぞ! 団体戦一回戦目だ! レディ〜ファイッ!!』

開始の合図と共に三人が散った。女の子は後方に構え、男二人は前衛だ。
私もフレンの言葉どおり、下がって支援中心の行動をすることにした。とりあえず同じ後衛の女の子の邪魔をしようと、軽い攻撃系精霊術の詠唱に入る。

「聖なる翼よ、ここに集いて……」

微精霊から力を借りつつ、目標を定める。女の子はツルハシに紐を結んだ、自作の飛び道具をリュックから取り出している所だった。
あんな大振りな武器では、盾で簡単に跳ね返されてしまうだろう。けど隙を作るには十分かもしれない。油断は大敵だ。
詠唱が完了し、力を解放するように叫んだ。

「エンジェル・フェザー!」

三つの光輪が前衛の男達の頭の上を飛び越え、女の子に向かっていく。男達はしまった!という顔で光輪を目で追う。フレンはその隙を見逃さず、彼等を一掃した。そして、

「飛天翔駆!!」

青白い輝きを纏いながら上空斜め上から滑空し、後衛の女の子を吹っ飛ばした。
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