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「……君も、参加するのかい?」
難色を示したフレンが詰め寄ってくる。怒られるのが怖くて、つい逃げそうになる。後退りした私を、「待つんだ!」と職務質問でこなれた穏やかながらも威圧感のある声が打ち据えた。
「どうしてこんな危ない所に来たんだい? ―――怪我をしないうちに帰るんだ」
「……嫌です」
「どうして。ここは君のような人が来る場所じゃない」
「……それって、私のレベルが低いって事ですか」
つい、フレンに嫌われる為の可愛くない物言いをしてしまう。けれども彼は嫌うどころか、私の機嫌を損ねてしまった事に慌てた。
「それは……僕はただ、君が怪我をする所を見たくなくて」
「そんなの知りません! 私は、自分の力を試してみたいんです」
精一杯睨みをきかせてみるが、相手は竦むどころか微笑み返してきた。
「そうか。なら、僕が個人的に君の相手になる。それで……」
「私が負けるに決まっているじゃないですか。嫌です」
「なら、僕と一緒に棄権しよう。君は僕を倒した、そういう事にして……」
「しません!棄権するなら一人でしてください」
説得材料が尽きたのだろう。フレンの表情に陰りが見えた。
「僕は君と戦いたくない」
「フレンさんだけ棄権すればいいじゃないですか」
「君の柔肌に傷が付くなんて耐えられない」
「そんなの知りません」
「よし、こうしよう」
「嫌です」
そっぽを向いて聞く耳を持たない私に、フレンは顔を歪めた。けれど、負けじと私の面前に回り込む。
「団体戦に出よう。僕と君の二人でチームを組むんだ」
「や……」
反射的に拒否しようとして、彼の言葉を理解して、止めた。
フレンと二人で団体戦に。フレンとチームに。それは二人で協力して戦うという事で、つまり――――
私が、フレンの力になれる!
「……っ!」
背中から腕にかけて、ざわっと鳥肌が流れた。
それこそ、私がずーっと望んでいたことだ。夢と言ったっていい。
彼と同じ場所に立って、彼を助けられる。
「……ほんとう? いいの?」
実感が湧かない。本当に、私が彼とチームを組んでよいのだろうか。そんな気持ちで聞き返した。すると、フレンは面食らった様子で頬を染めた。厳しかった目元は力みが消えて気弱そうになり、「え、えっと……」となかなかハッキリとした返事をしない。
「……? どうしたんですか」
「だ、大丈夫! 何でもないよ! 団体戦に出てくれるんだね? さ、そうと決まったら受付で手続きをしよう!」
心なしか早口でまくし立てると、彼は先行して受付へ向かった。