エピローグ
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そんなこんなで危機を脱した私は、相変わらず凛々の明星に参加していた。

「フレンはどーすんだ?」

「逃げちゃったし……多分振られたって思ってるよ」

相変わらずズキズキと胸が痛むが、仕方ない。完全に元の姿に戻れたのならまだしも、大人と子供を行ったり来たりな状態では、いつバレるかわからない。私は、彼の気持ちに応えるわけにはいかないのだ。

「まさか、フレンがあんなことするとは思わなかったね」

「そうね。彼、意外と情熱的なのね」

皆で雑談を交わしながら市場通りを進む。今日の依頼も無事完了した。後は依頼主に報告をするだけ。
フレンが出てくる様子もない。きっともう諦めてくれたのだろう。子供の姿でフォローはしたし、彼の恋はこれでおしまいだ。

「残念そうね」
「えっ」

図星を突かれ、驚いてジュディスを見た。彼女は何を考えているのか分からない笑顔で「付き合ってもよかったんじゃないかしら」と言った。

「無理だよ。私はフレンの娘なんだから」

「でも、今の姿が本当の貴方なのでしょう? 問題は無いように思うけれど」

そりゃあ、私もフレンの事は嫌いじゃない。むしろ……

「黒髪の君!!」

通りに響く凛とした声。足を止めて振り向くと、そこには噂の人物がいた。
心臓が思いっきり跳ねる。気まずさと恥ずかしさで、ぎゅっと胸が絞られた。
まさか、まだ諦めていなかったのだろうか。彼の手には、新たな花が握られていた。

「また会えた……」

彼は感激の表情で私に近付いてきた。
頭の中で恥を捨てて逃げるか、面子のために冷静に対応するかで二大政党がぶつかっている。
私はフレンに正体をバラす気は無い。でも、彼を傷つけるのも嫌だ。

「た、助けるべきかな?」

「口を挟むのは野暮ってもんだろ」

「そっか、そうだね!」

カロルとユーリは静観を決めた。ジュディスは……

「チャンスね。がんばって」

そう言ってヒラヒラと手を振って応援モードになった。
もう、前回のような助けは望めない。私が一人で決断して、一人で何とかしなくてはならない。
彼の求愛を受け入れるか、それとも跳ね除けるのか……
フレンはもう目の前に来ていた。今度の花は真っ赤なチューリップだ。

「今日こそ……私と交際してください!!」

花束が差し出される。
私は……
逃げた。

「黒髪の君!! せめて名前を! 名前を教えてくれ!!」

こうして、私は騎士団長フレン・シーフォに追い回されるようになったのだった。

おしまい。
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