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初めは、騎士団の負担を減らす為だった。
フレンに隠れて、こっそり続けたギルドでの活動。それはやがて、私も人の役に立てるのだと、自信をつけることにも繋がった。
今ではフレンのためだけじゃない。私は自分のため、自分がやりたいからギルドに参加している。実戦は未経験だった私も、今では一人で魔物を仕留める程になった。
そうだ。今の私は、それなりにレベルが上がっているはず。百戦錬磨でバーサーカーなユーリ達に及ぶ気はしない。影の英雄である彼等の強さは規格外だ。けれど、一般の―――並の傭兵ギルド相手なら、私もそこそこ強いのではないだろうか。
そう考えたら、ムズムズしてきた。

――――私も、闘技場で力を試してみたい!

ちらりとレイヴンの様子を窺ってみる。彼はつまんなそうに両手を頭の後ろにやって、リングを見ている。
彼なら、後で怒られたって平気だろう。
私の心は、案外簡単に決まった。
私はゆ〜っくり、カニ歩きで彼から距離を取った。そして通路の近くに来ると、全力で出口へ向かって走った。

服はもしもの時のために持ってきていた。宿屋に戻り、大きいサイズの服を引っ張り出し、浴場を借りて大人の姿になった。後は武器の調達だ。お金はギルドで稼いだ分があったので、すぐそこの武器屋で剣を買った。大会が終わったら売ってしまおう。そうすれば帰りも困らない。

個人戦にエントリーすると、呼び出しがあるまで控え室で待機するようにと言われた。控え室は緊張した面持ちの戦士や、はたまた自信たっぷりで余裕しゃくしゃくの剣士でいっぱいだった。女の人も少なくない。それだけで少し安心する。

「君。少しいいかな」

突然、肩を叩かれた。係の人だろうか。そう思いながら振り向いた。
次の瞬間。自分の目に映った人物に、心臓が飛び出そうになった。
場にそぐわない気高い白銀の甲冑に青い服、金の短髪に澄んだ碧の瞳。今会いたくない人物ナンバーワンがそこにいた。

―――ふれぇぇぇぇぇん!!

心の中だけで絶叫する。彼もまた驚いていて、光の加減で群青色に見える瞳をまあるくし、私を見つめていた。

「黒髪の君……どうして、ここに?」

「え、えっと……」

口ごもりつつ、後ずさった。
ばれた。ばれてしまった。いい子にしてるって、レイヴンと一緒にいるって言ったのに。こんなに早く!
っていやいや。今の私は『黒髪の君』なのだ。子供のときにした約束なんて関係ない。問題は、お堅くて心配性のフレンが『黒髪の君』の闘技場参加を許すはずが無いということだ。
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