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「小隊長の胸板っ……!」
「ソディアさん?」
「はっ! な、なんでもないわ、フィナ。では小隊長、私はこれで…… っ!?」
逃げるように踵を返しかけた彼女は、すぐ後ろに立っていたフレンに気付いて再びその場を飛び退いた。
「あ。すまないソディア。ついフィナと挟み撃ちに……」
「挟み撃ち!? 小隊長、一体何を狙っているのですか!?」
「いや、この魔導器の機能で……」
「どういう言い訳ですか!!」
彼女の言葉には、大分怒気が篭っている。動揺しているところに訳の分からない行動をされて、感情がかき乱されているんだろう。
でも、なぜだか私にはフレンの気持ちが分かった。ソディアの後ろ姿を見ていると、何故か「チャンスだ!」というような、変な高揚感が湧き上がってきて、無性に何かしなくてはいけない気持ちになるのだ。
彼女とフレンの言葉のキャッチボールが3回続いた後、ついに我慢の限界が来た。
「えーい!」
私は横から思い切り、ソディアの脚に抱きついた。普段フレンにやるような、容赦の無いやつだ。
「きゃっ!?」
突然脚を取られてしまった彼女は、バランスを崩して倒れそうにになる。
「フレン!」
「任せてくれ!」
すかさずフレンが彼女を抱きとめた。そして……
『共鳴術技!プリンセスホールド!!』
全ての乙女が羨む、完璧なお姫様だっこが完成した。流石、フレンはソディアを軽々持ち上げ、その表情には余裕が溢れている。あと十キロ重くても全然いけそうだ。
「やったねフレン!」
「ああ!」
謎の充足感が私達を包む。今の私とフレンは息がぴったり合っていた。言葉にしなくても、彼は私の望んでいる事をしてくれるのだ。
互いに笑顔を交わしていた私達だったが、すぐ近くに不穏な気配を感じて首を巡らせた。
「……セクハラです!!」
耳まで赤くしたソディアが、目を吊り上げて吠えた。
「……フィナ。この魔導器は欠陥品みたいだ。リタに返そう」
「……うん」