ティポ
[ 54/83 ]
「なんだい、フィナの秘密って」

『あのねーフィナはフレンのお』

「うらー!!」

咄嗟にそいつを地面に叩き付けた。フレンは私の突然の奇行に、「フィナ!?」と声を上げて驚いた。

「さっき“ぶつけるのは可哀想”って言ってたじゃないか!」

「気が変わったの!」

「だからって、そんな乱暴な扱いはしちゃいけないよ!」

「〜〜っ」

フレンは私の気持ちを分かってくれていない。突然、頭の中を勝手に読まれて、隠してた事を暴露されて、冷静でいられるわけがない。そうだ、私が悪いんじゃない。それなのに、何故私を責めるのだろう。
納得できない気持ちが膨れて、鼻や、目の奥が熱くなった。

『謝れーー! 理由も知らないくせに勝手なこというな!』

「うわっ、君、平気なのかい?」

ぬいぐるみは何事も無かったかのように、再び宙に浮いていた。

『ボクはちっとやそっとじゃ壊れないもんねー!』

「そう……でも、君自身がどう思おうと、物は大切に扱うべきなんだ。魔物が現れたときに使用するならともかく、何も無いときにあんな扱い方をするなんて」

『フィナの気持ちも知らずに説教するなー! フィナはフレンに秘密を知られたくなかっただけなのに』

「それは……確かに、酌量の余地はある。けれど、そんなに知られたくない秘密ってなんだい?」

フレンが屈んで、私の顔を覗き込んだ。なんだかそれが腹立たしくて、つんと顔を逸らした。

「僕は、君との間に隠し事なんてしたくない。君の全てを知っていたいんだ」

『うわ、なんかエロい〜』

「へ、変な誤解しないでくれ! 子供の行動を把握するのは、親の義務だ」

『へー……義務だから、フレンくんはフィナに構ってるんだ〜?』

「随分意地悪な聞き方だね。そもそもに相手への好意が無ければ、義務を負おうとも、果たそうとも思わないんじゃないかな」

『なにそれ〜』

「ちょっと難しかったかな。僕はフィナが好きってことだよ」

呆然とフレンを見上げた。さっきまで胸中で幅を利かせていた、イライラとした気持ちが急に小さくなった。

「だから、フィナの事は何でも知っていたい。そのために、賞与をはたいて使用者の思考を読むぬいぐるみを……」

私はフレンの顔面に向かってぬいぐるみをぶつけた。


おしまい。
[#次ページ]
[*前ページ] [もくじへ戻る] [しおりを挟む]
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -