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「かぷ」
「ッ、つう……ふふ……この程度の痛み、君への愛があればどうって事無いよ」
「ぎー……」
「あれ、ぺろぺろしないのかい」
「治りかけてるんじゃないか? もしくはお前の発言に引いたか」
「そうか……」
「残念そうだな」
「理由はどうあれ、フィナが僕を必要としてくれた事に変わりは無いからね。娘の役に立てるって、とても嬉しい事なんだよ」
「がぶ」
「うぐっ!」
「ああほら、かせよ。多分俺は噛まれねえから、抱っこして押さえててやる」
「ぎー!!」
「あれ、本当だ……ユーリは噛まないね」
「これも症状の一つなんだよ。なんでか親とか兄弟とか、気が置けない相手にしか噛み付かない」
「ということは……フィナ! 君も僕の事をッ……!!」
「がぶ」
「あだッ!」
「だから手ぇ出すなって!」
「くっ……! やっと君の気持ちを知ることが出来たのに、手を出せないなんて……生殺しじゃないか……フィナ! 君はなんていけない子なんだ! 僕をこんな気持ちにさせるなんて!」
「ぎぃー!」
「お、俺に抱きついてくるなんて初めてだな」
「えっ?」
「……なんて顔してんだよ」
「……君に」
「ん?」
「君にフィナは渡さない!!!」
「は? おい、ちょっと、コラ、待て!!」
「問答無用!! 炎よ、この剣に宿れ!!」
「待てって言ってんだろ!!」
「ききゃー!」
次の日、フィナは元に戻りました。
おしまい