[ 49/83 ]
*in下町

「こりゃ吸血病だな」

「なんだいそれは」

「かぷ」

「っ!……フィナ、なんで僕にばかり噛み付くんだい」

「最近下町の子供の間で流行ってんだよ。コイツも遊びに来たとき移されたんだな」

「皆こんな症状なのかい」

「ああ。コウモリの魔物の呪いとか言われてるけど、ほっときゃ一日で治る」

「そうか。良かった」

「くぃー」

「くぃー。ふふ、安心したら楽しむ余裕が出来たよ。ほら、見てくれユーリ。フィナは噛み付いた傷をちゃんとペロペロ舐めてくれるんだよ。可愛いだろう?」

「それ治療してるんじゃなくて、そうやって血を舐めてるだけだぞ」

「僕の血がフィナの血肉になるなら、それも悪くないな」

「怪しい趣味に目覚めるのは止めろ。頼むから」

「趣味? よくわからないけど、自分の身を犠牲にしてでも我が子の為に尽くしたいと思うのは、親として当然の事だと思うよ」

「お前は本当にいい父親だな」

「そうかな。そう言ってもらえると嬉しいよ。ありがとう。ところで、このケモノ耳の可愛さは犯罪だと思うんだ。早急に僕の部屋に拘留する必要がある」

「犯罪者の部屋に閉じ込めてどうする」

「犯罪者だなんて随分な言い草だな。このままフィナを世間の目に晒しておいたら、本物の犯罪者が寄って来るかもしれないだろう」

「大丈夫だ。一番ヤバイのが一番近くにいる」

「ぴーっ!」

「え? なんだい、フィナ?」

「ききゃー!」

「ふふふ、そんな可愛い声で鳴いて。そんなに僕に構って欲しいのかい」

「ぎー!!」

「明らかに嫌がってんぞ」

「困ったな。やっぱり言葉が通じないと……」

「きぃ」

「でも可愛いからいいか」

「いいのか」

「これくらいのことで、僕らの絆は切れたりしないよ」

「なんか、逃げ出そうとしているように見えるんだが……」

「病気の症状かな? フィナ、怖がらなくていいんだよ。君のことは、僕が絶対に守ってあげるからね」

「ぎぃーっ!!」

「フィナ……」

「もしかして、トイレに行きたいんじゃないのか? もじもじしてるぞ」

「あ」
[#次ページ]
[*前ページ] [もくじへ戻る] [しおりを挟む]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -