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*in下町
「こりゃ吸血病だな」
「なんだいそれは」
「かぷ」
「っ!……フィナ、なんで僕にばかり噛み付くんだい」
「最近下町の子供の間で流行ってんだよ。コイツも遊びに来たとき移されたんだな」
「皆こんな症状なのかい」
「ああ。コウモリの魔物の呪いとか言われてるけど、ほっときゃ一日で治る」
「そうか。良かった」
「くぃー」
「くぃー。ふふ、安心したら楽しむ余裕が出来たよ。ほら、見てくれユーリ。フィナは噛み付いた傷をちゃんとペロペロ舐めてくれるんだよ。可愛いだろう?」
「それ治療してるんじゃなくて、そうやって血を舐めてるだけだぞ」
「僕の血がフィナの血肉になるなら、それも悪くないな」
「怪しい趣味に目覚めるのは止めろ。頼むから」
「趣味? よくわからないけど、自分の身を犠牲にしてでも我が子の為に尽くしたいと思うのは、親として当然の事だと思うよ」
「お前は本当にいい父親だな」
「そうかな。そう言ってもらえると嬉しいよ。ありがとう。ところで、このケモノ耳の可愛さは犯罪だと思うんだ。早急に僕の部屋に拘留する必要がある」
「犯罪者の部屋に閉じ込めてどうする」
「犯罪者だなんて随分な言い草だな。このままフィナを世間の目に晒しておいたら、本物の犯罪者が寄って来るかもしれないだろう」
「大丈夫だ。一番ヤバイのが一番近くにいる」
「ぴーっ!」
「え? なんだい、フィナ?」
「ききゃー!」
「ふふふ、そんな可愛い声で鳴いて。そんなに僕に構って欲しいのかい」
「ぎー!!」
「明らかに嫌がってんぞ」
「困ったな。やっぱり言葉が通じないと……」
「きぃ」
「でも可愛いからいいか」
「いいのか」
「これくらいのことで、僕らの絆は切れたりしないよ」
「なんか、逃げ出そうとしているように見えるんだが……」
「病気の症状かな? フィナ、怖がらなくていいんだよ。君のことは、僕が絶対に守ってあげるからね」
「ぎぃーっ!!」
「フィナ……」
「もしかして、トイレに行きたいんじゃないのか? もじもじしてるぞ」
「あ」