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こうして、私は凛々の明星の一員になった。
といっても、普段は「騎士団長の娘フィナ」でいなければならない。ギルドの仕事を手伝うのは、彼らが帝都で仕事を請け負った時に限られた。
大体は騎士団が倒しきれない魔物の討伐で、私でも十分役に立てた、と思う。
その魔物の討伐依頼は、民間から来る事もあれば騎士団から直に来る事もあった。

「と、いう事なんだ。君たち凛々の明星に南部の魔物討伐を依頼したい」

「了解!任せてよフレン!」

騎士団長直々の依頼に、カロルは胸を叩いて快諾した。
それを聞いて、フレンはホッとしたように顔を綻ばせる。

「良かった。君たちに任せれば安心だ」

「毎度、ご贔屓いただいてありがとさん」

思えば、あの時が全ての始まりだったんじゃないだろうか。
彼にとっては初対面なのに、無視して隠れるのも気がひけて(フレンによる教育の賜物だと思う)……まあどうせバレやしないだろうと高をくくって、彼に挨拶をしたのだ。

「あの……騎士団長さん。初めまして。私、最近このギルドに入った者です。今後ともよろしくお願いします」

「そうですか。こちらこそ…………」

私を一目見た彼は、言葉を止めて目を見開いた。驚嘆の表情で私をじっと見つめる。
ぎくりとして、冷や汗が流れた。
これは、確実に「フィナにそっくり!」と思っている。珍しいものを見つけたときのような目だった。

「あ……あの、君は……!」
「じゃあフレン!俺達そろそろ行くから」

ユーリのフォローで、その場は逃げる事が出来た。

それが、三日ほど前の話。

そして今日。ギルドの皆で集まっていたら、街の見回りをしていたフレンと鉢合わせしたのだ。
もちろん、私は成長した大人の姿でそこにいた。
先日の事もあったので、今回は彼に触らないでおこう。そう決めて皆の後ろに隠れていた。
が、彼は私を見つけるなり早足で近付いて来た。逃げようかとも思ったが、逃げると余計怪しい。仕方なく平静を装って彼と対峙した。

「こんにちは」

「こんにちは。あの、少しお時間よろしいでしょうか」

いいわけない。「貴方はどこの誰ですか?」なんて訊かれたら困る。
言葉を濁すと、彼は返事を待たずに行動を起こした。
バサリという音と共に、目の前が真っ赤になった。花の香りが鼻腔をくすぐる。

「突然申し訳ありません。ですが、どうしても貴方に聞いて頂きたい事があるのです」

なにやら深刻で真剣な声音だった。

「一目見たときから、貴方の事が忘れられません。私と、結婚を前提に交際して下さい!!」

周囲の時間が止まった。
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