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「どこか、行きたい店はあるかい? アクセサリー屋とか、お菓子屋とか」
「じゃあ武器屋」
「ぶ、武器屋?」
フレンの声は明らかに動揺している。今までずーっと上機嫌だった彼に、一撃を食らわせることが出来てホッとした。
これで少しは私に幻滅してくれるはず。
と思ったが、彼はしぶとく食いついてきた。
「今使っている武器に不具合でもあるのかい?」
「別にないです」
「そうか。僕も剣選びに協力していいかな」
「はい」
「よかった。君はどんな剣を使ってるんだい?」
「ユーリのお下がりです」
「ユーリの……」
急にフレンが黙りこくった。突然の事だったので、つい彼の方を見てしまった。今までずっとそっぽを向いていたのに。
「―――今日は、僕が君に剣をプレゼントするよ!」
彼の目は燃えていた。
武器屋に入ると、彼は素早く商品棚に駆け寄り、剣の選定に入った。そして細身で女性的なデザインのものをいくつか選び出し、私を呼び寄せた。
「どうかな? こういうのなら扱いやすいと思うんだ」
試しに一つ手にとってみると、とても軽くて持ちやすかった。
「軽い……」
「ユーリは仮にも男だからね。彼のお下がりじゃ、重くて使い辛いのも無理ないよ。君が大剣を扱えるような子だったら、僕の剣をプレゼントしたいところだけれど……そうじゃないしね。君の細腕には、このくらいの剣が合うと思うよ」
「どうせ私は弱いです」
「えっ!? いや、僕はそんなつもりじゃ!」
面白いくらいに動揺するフレンを見て、こういうのもいいかもしれない、と思った。
“小さい私”と一緒の時は、いつも穏やかで落ち着いていて正しくて、後光が射している聖人のように見えた。
けれど、今の彼はちょっとはしゃいでいて一生懸命で、焦ったり失敗したりする。それが、不思議と嫌じゃない。
とりあえず全部の剣を振ってみて、一番しっくりと来たものを選んだ。
フレンはその剣に合うホルダーも一緒に買ってくれた。彼が使っているものと同じ、ベルトで腰に固定するタイプのものだ。
今までは鞘に紐を括り付けていただけだったので、正直とても嬉しい。
店を出てもじっと買い物袋を見つめる私を見て、彼は「付けてみる?」と袋を差し出した。
剣とホルダーを装備し、ショーケースの前に立ってみる。ガラスに映ったのは、まるでフレンのようにカッコイイ自分の姿だった。かっちりとした皮の鞘に納まる剣はとても安定していて、くるりとその場で回ってみてもずれたりしない。
「気に入ったかい?」
「うん! ……あ」
嬉しさのあまり、思いっきり素で笑顔を返してしまった。
しまったと思い彼を見る。私を初めて見たときのように、見開いた目をキラキラとさせ、じっと私を見つめていた。