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「帝都ざーふぃあすの……」

「ワオーン!」

聞き覚えのある鳴き声に振り向くと、ラピードが足元に座っていた。

「どうしたの? ラピード」

「ワフッ!」

彼は立ち上がると、花束の端っこに噛み付いた。

「もしかして、ラピードが預かってくれるの?」

「ワンッ」

「そっか。じゃあお願い」

「クーン」

花束を咥えると、ラピードは近くの茂みまで走っていった。多分、あそこにユーリ達が隠れているんだろう。

「ラピードがいてくれてよかったです」

そう言ってフレンを見上げると、彼は眉間に皺を寄せて茂みを睨んでいた。



「危なかったわね」

「ったく、こんなに早く仕掛けてくるとはな……」

「ねえ、フレンがこっち睨んでるよ……」

「ハハ、妨害されて不機嫌になっちまったか。もう少しで名前と住所を聞き出せたのにな」

「フィナも結構迂闊だよね。大丈夫かなあ」

「だからこそ私達がいるんじゃない」

「そういうこった」



とりあえず、帝都を散策することになった。ある程度時間を潰してから、レストランに入る予定だ。
いくらデートといえども、私は彼と仲良くする気は無い。普段どおり無愛想に行こうと方針を決め、彼との会話に挑んだ。

「騎士団長になった今では現場に出る機会が少なくなってね。剣が振るえなくて寂しいんだ」

「そうですか」

「君も剣を使うんだよね? ユーリから聞いたよ」

「はい」

「それに、精霊術も操れるそうじゃないか。僕はまだ精霊術に慣れていなくて……良かったらご指南願いたいな」

「リタさんに習ったらいいと思います」

「君は、リタに精霊術を習ったのかい?」

「ええ」

「そうか。彼女は今や精霊研究の第一人者だ。彼女に指導してもらったのなら、君の腕もきっと素晴らしいんだろうね。もしかして、エステリーゼ様とも面識があるのかな?」

「いちおう」

「そうか。あの方はずっとザーフィアス城で生活していた為に、同年代の友人が少ないんだ。是非仲良くしてあげて欲しいな」

「はい」

「その……今日の服も素敵だね。とても似合っているよ」

「どうも」

「うん、すごく素敵だ。嬉しいな。君を連れて街を歩けるなんて」

おかしい。こんなにけんもほろろで取り付く島を与えていないのに、彼のテンションは下がるどころか上がるばっかりだ。
さっき口ごもったのも話題に困ったのでは無くて、ただ照れていただけだった。もっと私から距離を取って欲しいのに、ずんずん歩み寄られてしまう。
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