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私の体は『いかにも日曜朝の魔法少女!』といったヒラヒラフワフワな衣装に包まれていた。ブーツにミニスカ、しかもヘソだし。
そして、一番の変化は……
「元に……戻ってる!?」
伸びた腕と足。この世界に来る以前の、高校生の体に戻っていた。
「君は……!?」
フレンの動きが止まった。その隙にミュウは彼の近くから逃げ出し、私の肩に上ってきた。
「ドリームフィナ! 魔法で彼を撃退するですの!」
「どり……え、誰?」
「あなたの事ですの! 変身した魔法少女にはコードネームが与えられるものなんですの!」
「そうなの?」
「そうですの! 魔法少女の正体がばれたら大変ですの! ストーカーの嵐ですの!」
「君……フィナなのかい?」
フレンには既にバレバレだった。
当初の彼は驚きでぼんやりとしていたが、次第にその表情は険しくなっていった。
目は鋭くなり、口元が歪む。それは、泣きそうな顔にも見えた。
「成長したフィナ……か……きっと、何処の馬の骨とも知れない男達から引く手数多なんだろう。僕を置いて、別の男の下にお嫁に行くのかい? そんな事、僕は許さない!!」
激昂した彼の迫力に、思わず体がすくむ。
と、突然彼は口角を吊り上げた。それは、毒林檎作りに成功した魔女のように邪悪な笑みだった。
「そうだ。いい事を思いついたよ。ちょっとだけ、君に……動けなくなる程度に怪我をさせれば……もう、何処にも行かないよね? 行けないよね? ねえフィナ」
フレンの青い剣が、ゆっくりと私に向けられる。
彼の思考が、どんどん狂わされていく。存在しない恐怖に追い詰められていく。
私の中に湧き上がったのは、哀しみではなかった。マモノに対する怒りだ。
強くて、真面目で、優しいフレンを、こんな状態にするなんて!
「ミュウ! マモノを倒すにはどうしたらいいの!?」
「相手を気絶させるですの!」
「そういう魔法があるの?」
「無いですの。ステッキで殴るですの」
「え」
フレンが真正面から斬りかかって来た。咄嗟にステッキで防御する。
ギン、と高い音と共に腕に圧力が降りかかった。
正直、耐えられるとは思っていなかった。けれど予想に反して剣とステッキは均衡状態になった。
「魔法の力で、身体能力が強化されているですの! ガチムチの騎士を相手にしても互角に張り合えるですの!」
「フレンはガチムチじゃないもん!! ちゃんと締まった体してるもん!!」
「よそ見しちゃダメですのぉぉぉ!!」
私達のやり取りを聞いて、フレンはフッと笑った。一瞬、元のフレンが戻ってきたように見えた。