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「待〜つ〜で〜す〜のぉ〜!! 貴方はこの世界の人とは少し違うですの! だから、この対マモノ用新兵器、コメットライトを使いこなせるはずなんですの!」

「兵器?」

物騒な言葉に驚いて振り向くと、確かに彼は背中に何かをしょっている。私の拳くらいの大きさのものが、皮袋に包まれている。

「爆発したりしないの?」

「これは適正のある人じゃないと使いこなせないですの。この武器には新技術、魔法の力が備わってるですの!」

また一気に怪しい話になった。
もう完全に無視して帰ろう、そう思ったとき、彼は私に背中の荷物を差し出した。

「一度使ってみるですの!」

触っちゃいけない。知らない人から物を貰っちゃいけない―――頭の中でフレンが私に言い聞かせるが、好奇心が勝った。
こんな小さな動物が、背負って運んでいたもの―――一体、どんなものなんだろう。
ドキドキしながら中身を取り出すと、それは手のひらに納まる空色の星だった。クリスマスツリーの天辺に飾るような、立体的なものだ。

「きれい」

手のひらで転がすと、それが突然光った。カシュ、と機械的な音を立てて細長い棒が、ぴろりん、と電子音を立てて羽が飛び出た。

「うわあ」

細長い棒の先に空色の星、持ち手の少し上に生えた天使の両翼。おもちゃ屋さんに売ってそうな、女児向けの魔法ステッキがそこにあった。

「思ったとおりですの! 反応があったですの!」

ミュウが両耳をピコピコと動かして喜んだ。
このステッキを使えば、彼の言うとおり魔法が使えるのだろうか。
キラキラと五芒星のエフェクトを飛ばしながら天の川の軌跡を描く様を想像し、期待に胸が膨らんだ。

「魔法って、どうやって使うの?」

「呪文を唱えるですの。シャルリーアシュルクヴェイティトポン!」

「……」

予想以上にファンシーで恥ずかしい呪文だった。もっと、「恒久なる彼方より現れ〜」とか、「聖なる恩恵を」とか、そういうものがよかった。
すっかり冷めてしまった私は、お礼を言ってステッキをミュウに返した。

「みゅ! どうして呪文を唱えないですの?」

「恥ずかしい」

「恥ずかしがってる場合じゃないですの!今この瞬間にも、マモノが誰かに取り付いて悪さを……」

「魔物なら騎士団が何とかしてくれるの」

彼らが毎日厳しい訓練をしているのは、魔物の脅威から人々を守るためだ。フレンがそう言っていた。

「マモノを倒すには魔法の力じゃないと無理なんですの!」

「なんで」

「なんでじゃないですのーー!!」

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