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「教室覚えた?」

「ちょっとだけ」

「私まだパソコン室わかんないんだけど」

「そこ知ってる」

「マジ? 何処? 何階?」

「丁度この階だよ。ほら、あっちの―――」

階段を上り切ったところで腕を伸ばした。指差す先で、偶然にも一人の男子生徒が教室から出てきた。
背が高い、金髪で、眼鏡をかけている。今日日の高校生には珍しく、えんじ色のネクタイを緩ませずにキッチリ締めているのが印象的だった。
カーディガンの袖を引っ張られた。犯人の方を向くと、「あの人!」と小声で叫ばれた。どの人、と聞く前に彼女は答えた。

「生徒会長だって!」

彼も私達に気付いてこちらを向いた。なるほど。整った顔は確かにイケメン。しかし、残念な事に口を半開きにして目を見開くその表情は、格好良いとは言いがたかった。

「フィナ……」

彼の口からこぼれ出た私の名に、私は友達と顔を見合わせた。

「何?知り合いなの?」

「ううん。知らない」

「でも、あっちはアンタの名前と顔知ってんじゃん。アンタが忘れてんじゃないの」

「そうかなあ」

もう一度生徒会長の顔を見た。向こうもこちらを見ていて、目が合うと少し恥ずかしい気持ちになった。それはあちらも同じようで、迷うように一度目を伏せて、それから恥ずかしそうに、もう一度目を合わせた。
話しかけるべきだろうか。話さなくてはいけないような気になってはいるが、何を話せば良いのか分からなかった。

「君たち」

幸いな事に、向こうから話しかけてくれた。友達が「なんですか」と微かにテンションを上げて答える。

「生徒会に興味は無いかな」


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