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「――――っ!?」

いつもと変わらぬ、灰色の天井が見えた。
胸の鼓動が早い。フレンはゆっくりと起き上がり、隣で寝ているはずのフィナを探した。
彼女は布団から飛び出し、枕の上で丸まっていた。器用な事をするものだ、と思わず笑いが漏れる。
時計を見ると、いつもの起床時間より30分ほど早い。二度寝することもできるが、夢の所為で眠気は吹っ飛んでいた。
とりあえず、フィナを元の位置に寝かせて布団をかけた。無邪気な寝顔に頬が緩む。瞬間、あのドレスを纏った黒髪の女性が頭に浮かんだ。
顔に火がついたのではないかと思うほど、一気に顔面が熱くなった。動揺と恥ずかしさと恋にも似たむず痒さ。
自分はなんて夢を見たんだ、とフレンは文字通り頭を抱え込んだ。
目の前のフィナは幼く、結婚どころかお付き合いさえまだまだ早い年齢だ。だのに、何故かレム睡眠中の脳は成長したフィナの姿を作り出し、しかもフレンのお嫁さんという位置に置いた。
これの意味するところは何だ? フレンは己に問いかけた。
確かに、ユーリと結婚観についての話をした。その所為で結婚を意識していたのは事実だ。ただ、相手が常識の範囲外だ。娘や妹同然の女の子に手を出すなんて、あってはならない、許されない事だというのに、なにがどうなってあんなことに。この子はまだ(見た目から察するに)5歳だ。僕は今年21。16歳差ということは、フィナが20のとき僕は36……十分いけるな……って、何を考えているんだ僕は!!
頭の中身を吹き飛ばすように、勢い良く顔を上げた。再びフィナの顔を眺める。可愛い。が、異性としてお付き合いしたいとか、そういった感情は湧いて来ない。
フレンは自分の性癖の健全さを確認してほっと息をついた。所詮夢だったのだ。

――――けれど。

再び、成長したフィナの姿を思い浮かべた。微かに胸が締め付けられる感覚に襲われる。
あの大人のフィナの存在はリアルだった。抱きつかれたときの体温や、香り。それらがありありと思い出せる。

「フィナ、あれは本当に君だったのかい?」

返答の無い問を口にする。夢の中の女性と、同じ色の髪を撫でた。
フィナが僕の運命の人なのだとしたら―――彼女と会った時に感じた、『自分がこの子の面倒を見なければ』という直感は……もしかしたら、そういう意味だったのかもしれない。
フレンは自分に第六感的な超能力があるとは思っていなかったが、人間の直感はバカに出来ないものだと思っていた。その直感に従ったお陰で、自分はこうしてフィナと楽しい毎日を送れているのだから。
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