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一番最初は、四六時中一緒だったフレンと離れることができて、清々しいくらいだった。けれど、30分もすると徐々に一人で過ごすのは味気なくなってきて、部屋に誰もいないのが心細くなって……最後にはフレンが恋しくて仕方が無くなるのだ。

「帰りたい……」

久しぶりの感覚だった。
元の世界なら、自由にお出かけが出来る。寂しかったら、メールや電話で友達と話したり、居間に行って親に話しかけたりすることができる。なのに、ここではそれが出来ない。
良く考えたら、女子高生が携帯電話ナシで過ごせているなんて凄い事だ。学校は携帯電話を禁止する前に、生徒を異世界に飛ばすことを考えたらいいのではないだろうか。本末転倒もいいところだけれど。

実りの無い考えをぼーっと続けていると、……尿意を催した。
「部屋から出ちゃダメだからね」とは言われている。けれど、トイレに行くために部屋を出るのは常識的に考えてOKだろう。
足のつかない椅子から飛び降り、ドアに駆け寄った。一応、ドアに耳をつけて外の様子を聞き取る。無いとは思うが、暗殺者が城に入り込んで、近くでドンパチやってるかもしれない。
特に危険そうな音は聞こえなかったので、そおっとドアを開けた。どうやら近くに見張りはいないようだ。
此処は男子部屋棟なので、トイレは男子トイレしかない。女子トイレは連絡通路を挟んで反対側の棟まで行かなければ。フレンが一緒の時は男子トイレの個室を使わせてもらうこともあるが、流石に一人で入る勇気は無い。

外に出て静かにドアを閉めると、斜向かいの連絡通路まで走った。すかさず黄色い花の植わった花壇の影に隠れる。花の香りが微かに香った。連絡通路には、見張りの騎士が一人いた。向こうの棟まで花壇は4つ。上手くいけば、見つからずに行けるかもしれない。もちろん、見つかっても全く問題は無い。ただ、なんとなく楽しいことがしたかったのだ。
―――誰にも見つからずにトイレに行って、ほくそえんでやろう!
私はそう心に誓い、見張りが背中を向けた隙を狙って次の花壇の影に向かって走った。

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