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「フィナは勉強熱心で偉いね。ご褒美に、時間まで少し読んであげるよ」

彼は本を取り上げると、ベッドに座った。「おいで」と猫でも呼ぶように私に微笑みかける。
小走りで近付き、隣に座ろうとベッドによじ登った。すると、フレンによってベッドから引き剥がされてしまった。「え」と思っている間に、そのままストンと彼の足の間に納まった。

「絵の多いページがいいよね」

目の前でページがパラパラとめくれる。背中に彼の温もりが覆いかぶさってきて、心臓が驚きできゅうっと縮み上がった。
まるで、後ろから抱きしめられてるみたいだ。

「このページが良さそうだね」

開いているのは、腕輪や建物、船の絵が書いてあるページだった。随分と統一性が無い。それぞれ名前らしき字と解説が下に添えられている。

「なあに、これ」

「魔導器の絵だよ」

「魔導器?」

「そう。じゃ、読むね」

結界魔導器、大型で効果範囲の広い魔導器。魔物を退ける力を持つ。
武醒魔導器、小型で、多くはアクセサリーのような筐体に納められる。術技を使用するために用いられる。
駆動魔導器、主に船などの動力として用いられる。規模により大きさは異なる。
光照魔導器、照明として使用する、光を発する魔導器……
彼が声を発するたび、頭の、彼の喉に触れている部分がむずむずした。

「やっぱりフィナには難しいかな?」

「ううん。そんなことないよ」

とはいえ、この体勢が気になって、ちゃんと本の内容を理解していなかったのは事実。「もっかい読んで」と甘えると、彼は「はいはい」と笑ってもう一度同じ文を読み上げた。ずらずらと色々な魔導器の名前が並べられる。私が知っている結界と武醒以外にも、たくさんの種類が存在していた。
どうやら、魔導器の多くは生活に必要な家電の代わりをしているようだ。

「電気が無くても動くの?」

「電気? 魔導器はエアルを使って動いているよ。フィナの世界では雷を使って魔導器
を動かしていたのかい?」

「ん〜……」

色々と説明が難しそうだ。魔導器=この世界の機械、という認識でいいのだろうか。常識が違っていて、何処から説明したらいいのか分からない。

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