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「そう。本物の武器を使った実戦演習だったんだ。もしかしたら、君は怪我をしていたかもしれない」

「別にいいのに」

「……どういうことだい?」

独り言のつもりだった。けれど聞き返されて、小言が増えるのを覚悟した。

「私は怪我してもよかったの。フレンに怪我して欲しくなかったの」

「フィナ……気持ちは嬉しいけれど、騎士という仕事に怪我は付き物なんだよ。僕たちは覚悟の上で戦っていたんだ」

「でも、フレンが痛い目にあうなんてやだ。私が代わりに―――」
「そんなこと考えちゃ駄目だ」

ぴしゃりと言葉を遮られ、怒らせてしまったかとフレンを見た。
据わった紺碧の瞳が、じっと睨むように私を見ていた。
今日の目色はいつもより冷たく感じる。少し怖い。けれど、完全に怒っているわけでは無さそうだ。
彼は「いいかい?」と私の反応を待った。
首を振っても話が進まなくなるだけだ。
仕方なく頷くと、長い説法が始まった。

「君はまだ子供なんだ。僕らと違って、出来る事が少ない。力だって弱い。だから、何か大変な事があった時、自分だけで何とかしようとしてはいけないんだ」

「でも、さっきはフレンも危なかったよ!」

フレンにだって出来ないことはある。だから私が手を貸しても良いはずだ。
それに、そもそも私は子供じゃない。確かに体力は彼らの足元にも及ばないが、中身は高校生なのだ。
半ばヤケになっていた。一度口答えをしてしまったのだから、小言が増えるのはもう決定事項だ。
今更気にしても仕様が無い。なら、我慢せずに言いたいことを言ってしまえ。

「フレンが危ないのに、放っておけない!」

彼は顔をしかめ、何かを躊躇うように顔を背けた。そして、

「僕は、あまりフィナに信用されていなかったみたいだね」

と力の入っていない声で呟いた。
そんな風に受け取られるとは思わなかった。
私は、フレンをとっても信頼しているのに。
貴方は唯一人、私の素性を明かしてもいいと思えた、大切な人だ。そんな風に誤解されるなんて……悲しい。
すぐに彼の言葉を否定した。すると、彼は首を振り、

「もし君が僕を信じてくれていたのなら、動じずに試合を見ていられたはずだ」

私が、フレンなら負けないと信じていたら。そう言われると確かに、私は彼の強さを信じきれていなかった。
けれど、何かすっきりしない。そんな考え方、ずるい。
胸のもやもやとしたものを言葉にしようと頭を回転させるが、上手くいかない。口ごもっている間に、彼はまとめに入った。

「とにかく、もう試合に乱入したりしないこと。武器を持っている人に近付く時は十分気をつけること。いいね?」

碧い瞳がこちらを見つめる。
頷けば、もうこの話は終わる。面倒な説教は過ぎ去る。
けど。

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