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正直逃げ出したい。「フレンを守るためにやったことだから、私は悪くないし!あいつらが悪いんだし!」と責任転嫁してしまいたい。
けれど言い訳をすれば、それはきっと小言の種になる。「本当にそう思うの?」と怒った顔で迫るフレンが頭に浮かび、まだ説教が始まっていないのに体が震えた。
「申し訳ありません。フィナが試合に乱入してしまったのは、私の責任です」
突然、ソディアがそう言った。ビックリして傍らに立つ彼女を見上げた。
庇ってくれるのは嬉しいが、どうして彼女の所為になるのだろう。この騒ぎの発端はあそこでルブランに説教されている人たちで、乱入騒ぎは私の勝手な行動だ。どう考えても彼女に非は無い。
「ソディアさんは悪くないです」
「ありがとう」
彼女はそう言って笑うだけで、私の言葉は肯定しなかった。
フレンなら分かってくれるだろう。期待して彼を見上げたが、続いた言葉に愕然とした。
「子供は思いもよらない行動をするものだ。次からは気をつけてくれ」
「はっ」
「なんで? ソディアさんは悪くないよ!」
思わずフレンに食って掛かってしまった。本当に、彼の考えが分からなかった。
弁解をしたのはソディアだった。
「フィナ。私は貴方が危ない目にあわないように、しっかりと見ていなければならなかったの。けれど、それが出来なかった。これは私の過失よ。小隊長が私に注意するのは正しい事なの」
正しい。その言葉が引っ掛かった。
彼女は直接何かをしたわけじゃない。それなのに、彼女にも責任があるからと注意するのは正しいのか。正しければ、彼女は何でも納得するのだろうか。
納得できない。
けれど。
「……ソディアさん、ごめん、なさい」
私が彼女に言える言葉は、これしか思い浮かばなかった。元を正せば、彼女が叱られる原因を作ったのは私だった。
「いいのよ。……小隊長。フィナにはあまり……」
「君の気持ちは分かるが、私はフィナの為にハッキリと言うつもりだ」
「……分かりました」
一言二言交わした後、ソディアは敬礼してどこかに行ってしまった。
「―――さて、フィナ」
フレンはしゃがんで、私の肩に手を置いた。目は合わせず、そっぽを向いてやった。ソディアのことで、釈然としない気持ちが彼に対してあったからだ。
小さな溜息が聞こえたが注意はされず、説教は開始された。
「いけない事をしたのは分かっているね」
「……うん」
「どうしていけないのか、説明できるかな?」
「……危ないことをしたから」
言いながら、彼に初めて叱られそうになった時のことを思い出した。
あの時も、私が危険な魔物に手を出したのが叱られそうになった原因だった。