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何が起こったのだろう。まだ、どちらの武器も相手に触れていないのに。

「武醒魔導器の力よ」

ソディアの解説で合点がいった。あの魔法を使うための装置の名前だ。その力で衝撃波のようなものを放ったんだろう。

「槍を使うならガードの習得は必須だ!基礎を思い出せ!」

同じ技で槍使いは次々と倒されていく。最後に残った剣士たちがフレンに斬りかかる。一つを避けて、二つ目の斬撃は盾で受け止める。そのまま、受け止めた剣を押し返し、持ち主もろとも、いや、その近くにいた他の剣士たちも一緒に氣のようなもので吹き飛ばした。彼らは尻餅どころか、背を地面につけ天を仰ぎ転がった。

「うわあぁああ!」

最後の一人。先程攻撃を避けられた騎士が叫びながら剣を振りかぶり、フレンの背中に切りかかった。

「フレン!!」

口から飛び出したのは悲鳴に近い声だった。

「あっ、フィナ!」

フレンが危ない。そう思ったら我慢できなかった。
いくら試合とはいえ、彼らが持っているのは本物の武器だ。刃は鋭利で、触れれば皮膚が切れるし、痛い。死ぬわけじゃない。けれど、痛いことは辛いことだ。フレンが辛い目にあう。そんなの嫌だ。
運良くソディアの腕から抜け出した私は、剣を振りかぶる騎士に向かって一目散に走った。周囲にどよめきが広がる。後ろでソディアが私を呼んでいる。それでも構わず、私はその騎士の足に飛びついた。

「ん!?」

彼は急に重くなった足をいぶかしみ、足を振った。私もそれに合わせて左右に引きずられる。

「だめ!フレンに怪我させちゃダメ!」
「ちょ、お嬢ちゃん!」
「フィナ!?」

フレンも私に気付いて声を上げた。
足が止まったので騎士を睨んでやると、彼は弱った様子でフレンと私を見比べた。そして、フレンが剣を下ろしたのを見て、掲げていた剣を下ろした。



「ばっかもーん!!」

ばっかもーん、もーん……ルブランの声が訓練場に響き渡った。彼の前には例の長身と短身の騎士が首を垂れて立っていた。

「貴様らというヤツは!いくらフィナ殿が可愛いからといって!」
「し、しかしであーる……」
「しかしもなにも無い! 己の未熟さが分からんか! 愛する者を守る剣は、とてつもなく強いのだ!! 貴様らの剣は何だ!? ただのやっかみではないか!!」

遠くでルブランの説教を聞き、恥ずかしい気持ちになった。
愛する者を守る……フレンの戦う姿は、周囲からはそんな風に見えたのか。

「フィナ」

怖い声に呼ばれてフレンに向き直る。今度は私が説教をされる番だ。

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