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「フレンも戦うの?」

「うん。実戦経験は大切だからね」

「じゃあ私、応援するね」

「本当かい?」

彼は引き締めていた表情を緩ませ、どこか安堵したような笑顔を浮かべた。

「嬉しいな……フィナの為にも頑張るよ」

もしかしたら、フレンも私に嫌われたのではないか、と心配していたのかもしれない。
彼の嬉しそうな顔を見て、そんな考えが浮かんだ。
実戦演習は三組同時に行われ、参加しない騎士も三班に分かれて担当の組の戦闘を見学し、終了後に改善すべき点をアドバイスする、というスタイルだった。
小隊長であるフレンには全部が担当であるらしく、常に場所を移動して全ての組に目を配っていた。
そんな彼についていこうとしたら、「危ないからついてきちゃ駄目」とソディアのいる班に預けられてしまった。
仕方が無い。この班が担当する組を応援しよう。
騎士の皆もそれぞれ声援を送っていて、「もっと脇をしめて!」だの、「すぐ体勢を立て直す!」だの、実践的なアドバイスが飛び交っていた。フレンも同じように全ての組に声をかけているようだ。
私には彼らのような武道の心得が無い。少し恥ずかしく思いながらも、「がんばれ〜」と全く何のアドバイスにもならない声援をフレン小隊の騎士に送った。


「ま、参ったのであ〜る!」

ソディアに剣を弾き飛ばされ、長身の騎士が尻餅をついた。
漫画や映画のように鮮やかな勝利だ。今なら宝塚歌劇団の男役にキャーキャー言っている人たちの気持ちが分かる。本当に男の人より格好良いのだ。

「すごい!ソディアさんカッコイイ!」

興奮そのままに叫ぶと、ソディアは振り向いて微笑み、負けた騎士は尻餅をついたまま私をジロリと睨んだ。そして、立ち上がるなり私を指差してわめいた。

「うるさいである!試合中も、その高い声が癇に障って集中できなかったであーる!」

突然怒りの矛先を向けられ、驚きで興奮が一気に引いた。血の気も一緒に引いて行き、体が震えそうになる。

「ご、ごめんなさい」

「貴様……負けた腹いせにフィナを怒鳴るなど!」

ソディアが声を荒げ、再び剣を長身の騎士に向けた。しかし彼は怯える風もなく、むしろこちらを馬鹿にするようにハン、と鼻を鳴らした。

「試合は終わったのであーる! 丸腰の相手に剣を向けるなんて、騎士の風上にもおけないであーる!」

「そうなのだ! 大体、いくら騎士団で保護するからといって、訓練にまで子供を連れ出すことは無いのだ!」

ルブラン小隊の、やたら低身長な騎士が加勢して叫んだ。それを見たこちらのフレン小隊の皆も、ソディアに加勢しようと彼女の元に駆け寄った。

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