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「はい。騎士団長からだよ」
「私に?」
フレンが差し出したのはマントだった。彼の鎧と同じ青色で、白で羽のような曲線が大振りに描かれている。
広げてみると、背中の部分には細かい刺繍で紋章のようなものがあった。
腕を通す穴があるので、コートのように着れるようだ。
「魔法使いのローブみたい」
本気でそう思った。これを羽織れば、光弾の一つや二つ、かるく操れそうだ。
「君が騎士団保護下にあると分かりやすくするためのものなんだ。ほら、それは騎士団の紋章なんだよ」
言われてみれば、背中の紋章には剣が表現されているように見える。
「着ていたほうがいいの?」
そうだね、できればと彼が言うので、ならばと早速羽織ってみた。買ってもらった服が落ち着いた色味だったので、鮮やかな青のマントととてもよく合った。
フレンと同じ色。なんだか嬉しくなって、彼の着ている鎧と自分のマントを何度も見比べた。
「お揃いだね」
彼も気付いた。顔を上げるとじっと私を見つめる透き通った浅葱色の瞳と出会う。なんだか恥ずかしくなって、へらっと互いに笑い合った。
「それじゃあ、行こうか」
差し出された彼の手を握る。私のことを知っても、彼の態度は変わらなかった。変わらず私に笑いかけてくれる。それが、とっても嬉しい。
思い浮かぶ教室の風景。
友達の隠し事を知ってしまって、どう接していいのか分からなくなって、なんとなくぎこちなくなってしまって……最後には話さなくなってしまう。
そんなことにならなくて、本当に良かった。
「おはよう、諸君」
フレンの部屋を出て間もなく、背後からの重厚な声に挨拶された。
振り向くと、騎士団長アレクセイがそこにいた。フレンはすかさず足を揃え姿勢を正し、腕を胸の前で水平に構え、敬礼のポーズをとる。
「おはようございます!騎士団長!」
「おはようございます」
私はお辞儀で挨拶をした。アレクセイは私たちを見て満足げに頷き、「その後、どうだね?」となんとも曖昧な問いを投げかけた。
「はっ。特に問題はありません。お気遣いありがとうございます」
「そうか。フィナくんの身元のほうは分かりそうかね?」
ぎくりと心臓が嫌な動きをした。なんというタイミングだろう。昨日、異世界の人間だとフレンに告白したばかりだというのに。