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フィナを見つけた墓所の主。ナイレン・フェドロック隊長の影響だ。

―――こいつ、隊長にフィナを任されたとか思ってんじゃないだろうな。

自分も彼も、神様や幽霊の存在を信じる方ではない。
だが、もう人の訪れないシゾンタニアの、普通の人なら用の無い壊れた結界魔導器の麓。そこで生きた子どもを見つけるなんて。ありえない。フレンが寝坊するくらいの超低確率の出来事だ。
あの子供を見つけた。それだけで運命的なものを感じる。
そして、ユーリ自身を含め、かつてフェドロック隊にいた人間ならこう考えるだろう。
『ナイレン隊長の意志が働いているのかもしれない』
そう期待させるだけの記憶が、あの街にはあるのだ。

ユーリは胸に詰まっていた息を一気に吐き出した。
親友の身を案じてつついてみたものの、考えれば考えるほど、説得するのは無理な気がしてくる。
―――隊長は死んだんだ。そんなもの、生きている俺達の錯覚でしかない。
そう言ってしまうのは簡単だが、口に出すのははばかられた。
なにより、ユーリ自身がこの話に運命的なものを感じている。それは、抗いようの無い事実だった。だが、運命の一言で納得するほどユーリはロマンチストではない。
こうなったら、納得するためにこの問題の原因のひとつに色々と問い詰めるか。
お前は何者だ。どうしてあんなところにいたんだ。お前の目的は何なんだ、と。
しかし相手は記憶喪失で、しかも幼児。まともな答えが帰ってくるとは思えない。見たところ素直な良い子で、厳しい態度を取るのも気が引けた
ユーリはいらいらとした割り切れない気持ちをくすぶらせ、両腕をテーブルから外して胸の前で組んだ。

「ユーリは」
「ん?」
「ユーリは、僕にどうして欲しかったんだい?」

フレンの真摯な目がユーリに向いた。
少しもぶれた様子はない。意見を聞き入れるためではなく、あくまで興味で聞いているらしかった。

「普通の孤児と同じように扱って欲しかったよ」
「同じだろう。親、もしくは里親が見つかるまで然るべきところで保護する」
「俺は、その然るべきところが騎士ひとりってのが納得できねーの」
「僕はそれを了承したんだ」
「お前な、下手すりゃ里親が見つかるまで世話することになるんだぞ。当然、もしもの時は腹くくって養子にするんだろうな?」
「はは。それもいいね」
「おいおい……21にして子持ちかよ。結婚するとき苦労するぞ」
「結婚?」

フレンは思わず噴出した。その日暮らしをしているユーリから、結婚なんていう人生設計の1ピースが出てくるとは思わなかったのだ。

「ユーリは結婚したいのかい?」
「まだわかんねぇよ。今は俺じゃなくてお前の話だ!」
「……僕も分からないな。しなくてもいいかな、とは思ってる」
「へえ」

驚き、とまでは行かないが、予想していなかった答えだった。
ユーリは俄然興味を持ち、フレンの方へ身を乗り出した。

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