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そういえば、あの料理当番の騎士は私とユーリが似ていると言っていた。確かに同じ黒髪黒目だが、それ以外に似ているところは無いように思える。

「ねえフレン。本当に私とユーリさんって似てる?」

そういえば、そんな話をしたね、とフレンは柔らかく笑い、少し私とユーリを見比べて

「フィナのほうがずーっと可愛いよ」

と太鼓判を押した。高確率でユーリは可愛さなんてステータス、求めちゃいないだろう。
比べるところが違う。と思いつつも、やっぱり嬉しく感じてしまった。

「どーせ俺は可愛くないですよ、っと」

ユーリはひねた女性のような文を義務であるかのように棒読みすると、身を乗り出して私の顔を覗き込んだ。

「やっぱ、隠し子じゃねーみたいだな」

「誰の」
「お前の」
「殴るよ」

「悪かったって。でも、任務で拾った子どもに休みの日まで付き合うなんて、普通そこまでするか?」

「彼女の処遇は僕に一任されているんだ」

ぽんぽんと小気味良く交わされる会話に、少しの疎外感を感じながら耳をかたむけた。
殴る、なんて乱暴な単語がフレンから出てきたのは初めてだ。
それほど彼にとってユーリは、気がおけない友人なのだろう。

「あっ!フレンだ!帰ってたんだ」

ぱたぱたとひとりの子どもが駆け寄って来た。緑がかった茶色の短髪をツンツンとはねさせた、活発そうな少年だ。

「やあ、テッド。元気そうだね」

「うん! 聞いてよフレン。ユーリったらこの前さー!」

「あーハイハイ」

ユーリがテッドの言葉を遮り、何故か私を持ち上げると少年の目の前に置いた。

「なにコイツ」

こっちのセリフだ。
このテッド少年、今の私より年は上のようで、背も私より高かった。

「ほれ、挨拶」

言われてしぶしぶ「フィナです。こんにちは」と頭を下げた。

「僕はテッド! なあ、コイツだれ?」

「昨日帝都に来たばっかりの、フレンとこのお嬢さんだ。お前のほうが兄貴だろ? 可愛がってやれよ」

兄貴、という単語が気に入ったようで、テッドは兄貴……と繰り返して目を輝かせた。

「ようし!フィナ!今日からお前は僕の弟分だ!僕のことは兄貴って呼ぶんだぞ!」

私は女だ。

「ちょっと待って」

フレンが椅子から立ち上がり、私の横にしゃがんだ。そして、私が両手で抱えていた紙袋を取り上げる。

「僕らはしばらくここにいるから、少し遊んでおいで」

彼にしてみれば気を利かせたつもりだろう。でも、ありがたくない。
子供と遊んだのなんて、家庭科の保育実習以来だ。何を話したらいいのかも分からない。

「行くよフィナ! 兄貴が朝市の何たるかを教えてやる!」 

「ほら、呼んでるよ」

フレンに促され、私は仕方なくテッドの後を追った。

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