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几帳面な彼から逃げられる気がしない。そういえば、ついさっき「どんなことがあっても守る」と言われたばっかりだ。まさか性別の壁を越えて風呂場でも守ってくれるとは思わなかった。人生って上手くいかないものだ。
ここは、腹を括るしかない。この障害を乗り越えないと、今後一切、お風呂に入れないかもしれないのだ。
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥。今の一時の恥を乗り越えれば、今後恥ずかしい思いはしなくて済むはずだ。慣れという魔法によって。
無理矢理自分を納得させ、ベルトに手を掛けた。それを見てフレンは大丈夫だと思ったのか、自分の服を脱ぎ始めた。
やっぱり無理だ。青年男子の脱衣シーンを目撃して、意気が水をぶっ掛けられたかのように消えた。
すぐさま着替えを引っつかみ、「やっぱり一人ではいる」と宣言して脱衣所を逃げ出した。
が、やはり幼児の足はたかか知れている。あっという間に捕まった。
泣き喚く私を見て、お風呂嫌いだと勘違いしたフレンは
「ちゃんとお風呂に入らなきゃ駄目だ」
と説教をしながら無理矢理私をお風呂に入れたのだった。


「お風呂に入ると、さっぱりして気分がいいだろう?」

「……うん」

風呂から上がって、体を拭くのも早々に服を着た。水分がきちんと拭き取れておらず、服が体にくっつく感じがする。
タオルを頭にかぶせて髪を拭き、フレンから目を背けているのを誤魔化した。
もうお嫁に行けない、というのはこういう気分のことを言うのだろう。
ものすごい羞恥からくる罪悪感と居た堪れなさ。今の私に見られて困る所なんて無いが、成人男性の裸は流石に刺激が強すぎる。

「のぼせちゃったかな」

服を着終わったフレンが、私の赤い顔を見て言った。
あんたの所為だ。
すっと浮かんだ暴言に、自分自身でビックリした。裸の付き合いをして、彼に対する遠慮が吹き飛んだようだ。

「かしてごらん」

私の頭に手が伸びたので、拭いていた手を離した。彼の大きな手がタオルの上からわしわしと頭を撫でる。
私の小さな手で拭くより、遥かに効率がいい。そんなことを考えながら目を閉じて拭き終わるのを待った。
急に手が止まった。彼を見上げると、その両手が包み込むように私の頬に添えられた。

「フィナの顔、リンゴみたいで可愛いね」

眉を八の字にして、フレンは可笑しそうにクスクスと笑いだした。
私の頭に、更なる血が上った。

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