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「何処に行くの?」

ソディアたちはもう解散してしまったので、馬屋に戻る必要はない。私の取扱い責任者はフレン。彼の裁量で今後の行動が決まるはずだ。

「うん? ああ、旅の疲れと汚れを落すために、お風呂に行こう。そうだ、その前に君の服を用意しないと」

お風呂!
心が浮き立った。この世界に来て以来入っていない。道中、川で体を洗ったきりだ。
早くあたたかいお湯に浸かって、さっぱりしたい。ちょうど体の埃っぽさが気になっていたところなのだ。
ひとまずフレンの部屋へ行き、私の着替えを探すことになった。
彼の私室は簡素だがとても綺麗な部屋だった。机の上は散らかっていないし、椅子や本、あらゆる物がきっちりとあるべき場所に収まっている。
普段の実直な性格そのまま、彼の几帳面さが表れている。

「また男物になってしまうね。落ち着いたら街に買いに行こう」

彼のお下がりを出してもらい、再びお風呂場へ向かった。彼が言うには、お城で働いている人用の浴場があるらしい。

「この時間帯ならきっと貸切だよ」

「広いの?」

「そうだね」

フレンに手を引かれ、お城のことを教えてもらいながら歩いた。
少しすると、それらしい扉の無い入り口が二つ見えた。並び方からして、男湯と女湯の入り口だろう。

「ここだよ」

予想通り、フレンが左の入り口の前で立ち止まった。
彼が左なら、右が女湯なのだろう。手を離して右の入り口へ向かう。
が、フレンが手を離してくれない。私の手を掴んだまま、ずんずんと奥へ進んでいく。
どうしたんだろう。
混乱したまま彼にズルズル引っ張られ、脱衣所まで来てしまった。
呆然と立ちつくしていると、彼は私を振り向き、

「さ、お洋服を脱ごうね」

一緒に入る気だ。
ようやく彼の意向を理解した。
初対面で着替えを手伝ってもらった時『今の私はお父さんと一緒にお風呂に入っても問題の無い年頃』だと思った。
けれどそれは、あくまで『お父さん』とだ。近所のお兄ちゃんとじゃない。そこまで裸の付き合いに寛容ではない。
すぐ女湯に一人で入れると主張したが、
「ここのお風呂は広いんだ。溺れたり、滑って転んだら危ないだろう?」
と即却下された。確かに最もな理由だ。彼と一緒に入るのは極普通で賢明な気さえしてくる。
けれど、感情が付いていくわけが無い。無理だ。嫌だ。恥ずかしい。帰りたい。
いろんな気持ちがまぜこぜになって立ちすくんでいると、フレンはどうしたの?具合でも悪くなったの?と顔を覗き込んできた。
具合が悪くなったと嘘を言って逃げる手もある。けれど、そうなるとお風呂に入れない。旅で汚れた体を綺麗にできない。
時間を置いてお風呂に再挑戦したとしても、そこにはやっぱりフレンが付いてくるだろう。

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