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今日も最初はフレンの馬だ。

「さっきの話だけど」

頭の上からフレンの声がして、首をひねる。すかさず「前を見て」と注意されて、慌てて正面に向きなおった。

「どうして魔導器で大人になったり、いろんな世界に行きたいと思ったんだい? 絵本でそういうお話を読んだのかな?」

なんて説明をしよう。まだ、彼に全てを話す決心が付いてない。
けれど、嘘をついてこの場を逃れるのは真摯な彼を裏切るようで忍びなかった。
返答に困っていると、彼が口を開いた。

「思い出せないならいいんだ。君の話が聞ければと思ったんだけど」

「私の話?」

「ああ。他愛も無い話の中に、君の身元の情報が含まれているかもしれない。それに、もっと君の事を知って、君と仲良くなりたいからね」

なんて事を、さらっと言う人なんだろう。
この人はやはり、異世界人だ。私がいた世界では、こんなことを実際に言われたことはなかった。「仲良くなりたい」なんて。
戸惑いと恥ずかしさで顔が熱くなる。同時に何故か、嬉しさもあった。
先にフレンが口にしたことで抵抗が薄れていたのだろう。気持ちが自然と口からこぼれ出た。

「私も、フレンさんと仲良くなりたいです」

いつもなら絶対に口にしない言葉だ。人との仲は、偶然気の合ったときに良くなるもので、宣言したところで本当に仲良くなれるとは思っていないから。

「君にそう言ってもらえると、嬉しいよ」

フレンが笑っている気配がする。喜んでくれた。嬉しい。
この人に、もっと喜んでもらいたい。
私にとって、初めての感情だった。

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