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「眠れないのかい?」

至近距離で優しい声が囁く。
何の因果か異世界に落ちてしまった私は、運良く近くにいた帝国騎士に拾われた。
小隊長のフレン・シーフォ。金髪碧眼の好青年である彼に保護され、彼の小隊と一緒に帝都へ向かっている。帝都までは数日かかるそうで、私は初めて野宿というものを体験中だ。
地面はゴツゴツして、ブランケットは薄い。けれど寒くは無い。寝心地はよくないけれど、それは布団の有無の所為じゃない。
隣で添い寝してくれているフレンの所為だ。
すぐ横に男性が寝ているという緊張と、慣れない彼の香り。とてもじゃないが、眠れない。

「僕が付いていてあげるから、安心してお休み」

ぽんぽん、と私のお腹をやわらかく叩く。そのリズムと彼の体温が心地良くて、実際に瞼が重くなってくる。
まるで子供だ。私は本当に子供になってしまった。

この世界に来たら、何故か体が縮んでしまっていた。変な薬を飲んだ記憶も無いのに。
今の私は、幼稚園児くらいの見た目だ。小隊の人達にも子ども扱いをされている。
どうやったら元に戻れるのかは分からない。とりあえず、フレンと共に帝都へ行く。これが今の目標だ。
そこへ行けば、何か分かるかもしれない。
この世界のこと、帰る方法、空で会った不思議な動物。彼についても……

夢は見なかった。衝撃的な出来事が幾つもあって、自分が思っていたより疲れていたんだろう。真っ暗闇から目を覚まして最初に見たのは、眠った時と同じ、温かく微笑むフレンの顔だった。
朝は憂鬱なものだ。無理矢理布団を抜け出して、無い時間に追われて準備をして、学校へ向かう。それが日常だった。
今いるのは非日常。しかも今後が分からない絶望的な状況だ。それなのに、今朝は今までで一番気分の良い目覚めだった。

「おはよう、フィナ」

「おはようございます」

他の人はもう起きていて、私が起こされたのは一番最後のようだった。
朝ごはんは焚き火で調理するそうで、私も薪集めで手伝うことになった。
ただし、フレンの目の届く範囲で、という条件つきだ。
少しでも力になろうと張り切って薪を探すが、一向にいいものは見つからなかった。
どれも鉛筆のように細い。テレビや本で見たような、丁度良い太さの枝が無い。
仕方なく長めの枝をかき集め、戻ろうと顔を上げた。
すると、近くに鳥が降りてきた。「チュンチュン」とスズメのような鳴き声なのに、くちばしはそれより大きい。色も白い部分が多いようだ。
珍しくて見入っていると、向こうもこちらに気付いた。ちょんちょんと細い足でこちらに近付いてくる。
思ったより大きい。ウサギくらいの大きさだ。一向に逃げないのは人に慣れているからだろうか。
触れるかも。
そう思い、鳥に向かって手を伸ばした。

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