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「お前も過保護だな」
箱に入れたトランプを片手で弄びながらユーリは言った。
フレンは怒るでも慌てるでもなく、涼しげな表情で
「ズルはしていない。ちゃんとルールに則って勝負をしたよ」
と断言した。彼は窓際に立ち、窓の外を見ていた。
「確かにな。フィナの表情でカードが分かっちまうのはルール違反じゃねえし、わざとジョーカーを引くのもルール違反では無いな」
「君が容赦無さ過ぎるんだよ。大人気ない」
「子供に社会の厳しさを教えてやってんだよ」
彼は反省するどころか、とても格好良い事をしたかのように得意げな表情を浮かべた。
「わざと負けたって知ったら、フィナだって喜ばねえだろ」
「わざと負けてなんていないよ」
フレンは窓下の誰かに向かって手を振ると、ユーリを振り向いた。
「僕がフィナに与えたのは勝利じゃなくてチャンスだ。フィナは自分の力でチャンスを活かして、勝利を掴み取った。だから、あの勝負はフィナの勝ちなんだ」
「だから、それが過保護だって言ってんだよ」
「フィナのしょんぼりした顔を見たら、手を差し伸ばさずにはいられないよ。こう、胸が締め付けられるような感じがして辛いんだ」
「……よくわかんねえ」
「だろうね。君にフィナの可愛さは理解できないよ」
フレンは満足げに微笑むと、再び視線を窓の外、ラピードと戯れるフィナへと向け、彼女が転んだのを確認するなり某物語のオープニングよろしく窓から外へと飛び出した。