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「ごめん、ごめんよフィナ! 君が少しの辛味も駄目だったなんて……」

少しってレベルの辛さでは無かったけど、彼にとってはそうだったみたいだ。
改めて、彼と私の違いを実感した。
フレンと私は違う人間で、モノの受け取り方、感じ方が違う。それでも、彼はそれを楽しんでいるようだったし、私も、フレンに変な所があっても気にならない。
彼は、“こういう人”なのだ。
温かなフレンの手が、頬に添えられ、「まだ痛いかい?」と心配そうな声が降った。
まだ少しヒリヒリしていたけれど、「もう平気」と答えた。もう、フレンに心配して欲しくない。
けれど、そのくらいは彼にもお見通しだったようで、「本当に?」と本心を探るように目を覗かれた。
水色より濃くて、緑がかった青い瞳が、真っ直ぐに私を見つめている。本当に心を覗かれそうな気がして、後ろめたくて心臓がそわそわした。
早く目を逸らしたい。けど、逸らせたら嘘がばれてしまう。
そんな緊張状態の中、上から何かこげ茶色の物が差し出された。

「食ってみろ」

ユーリから渡されたそれは、ケーキの上に乗っていたココアクッキーだった。CDくらいの大きさで、クッキーにしては大型だ。少しクリームがついているけれど、精巧なチョコペン文字はそのままだった。

「ユーリ。これはあくまで飾りだよ。食べてもそんなに……」

「そうだな。お前、手抜いて作ったろ」

「ああ、余った分をつまんだのかい? コレは食べるためのものじゃないよ」

「おいしい」

「え?」

半信半疑でかじってみたそれは、サックリと軽い歯ざわりで、ホロホロと口の中で崩れて、ココアとバターの風味がふんわりと口に広がって、幸せな甘さが充満する、とっても美味しいクッキーだった。エステリーゼに貰った、一流のパティシエが作ったであろうクッキーにも負けない。むしろ、勝っているんじゃないだろうか。
すぐに二口目をかじる。やっぱり美味しい。
三口目を口に入れて、私に向けられた視線に気付いた。
してやったりと笑うユーリと、ぽかんとしているフレン。「おいしいよ」とフレンに言うと、彼はやっと笑顔になった。





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