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フィナを養子に迎えたい。

これは、フィナを保護したときから密かに想い続けていた事だった。
最初はほのかに、しかし彼女と過ごすうち、その気持ちは段々と強くなった。そして今では確固たる願いとなっていた。
彼女と過ごす日々は鮮やかだった。それまでの、任務と訓練に明け暮れていた、自分なりに充実していると思っていた日々が色褪せてしまう程に。
以前の自分はどうやって日々のモチベーションを保っていたのだろう。フレンはぼんやりと考えた。
今ではフィナの笑顔が全ての動力源になっていた。彼女の為を思えば、貴族出身者たちによる、どんな理不尽も耐えられるのだ。
仕事を終えて部屋に帰れば、フィナが出迎えてくれる。自分を必要とし、純粋な好意を向けてくれる存在が。
それだけで、自分の負ってきたあらゆる苦労が報われる。
そんな存在がいなくなる。想像するだけで胸が痛み、足元が揺れる感覚がした。

―――早く告げれれば良かったんだ。元の世界じゃなく……僕を、選んで欲しいと。

後悔しても遅かった。
異世界にフィナを奪われることを心配している間に、こちらの世界でもフィナを奪う人間が現れてしまったのだから。


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