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「でも、どうしてフレンとフィナが? ヨーデルが招待したんです?」

エステリーゼは私を離し、きょとんと首を傾げた。

「ええ。彼女が来てくれれば、この食事会も楽しいものになると思って」

そうにっこりと笑いかけられ、少し焦った。
期待されても、一体何をすればいいのか分からない。私は、人を楽しませるような芸を持っているわけではないのに。

「フィナ」

ヨーデルがしゃがんで私の手を取った。女の人みたいに白くて綺麗な手だ。

「今日は、私のパートナーになってくれますね?」

目を見開いて彼を見た。驚いたのはフレンとエステリーゼも一緒で、エステリーゼは胸の前で拳を作り、駄々を捏ねるように上下させた。

「ヨーデルずるいです! 私もフィナと一緒に……」

「私はこの日のためにドレスのプレゼントまでしたんですよ? フィナは僕のです」

「し、しかし殿下! フィナは、その……まだ小さくてこういった場の振舞い方や礼儀をわきまえておらず……」

フレンの焦りが伝わってくる。流石に心配なのだろう。私だって心配なのだから当然だ。

「承知しています。私が今日一日で立派なレディにしてみせますよ」

彼は私の両手を握り、「ね?」と同意を求めて来たが、不安で頷けなかった。

「う〜ん、流石に無理ですか」

私の顔をじぃ〜っと観察しながら言う。既に予想していたことなのか、特に残念そうな顔はしていなかった。

「そうですよ殿下。殿下のパートナーなんて恐れ多い……」

「では、フレンも一緒に来て下さい。それならフィナも安心ですよね?」

口調は穏やかだが、何故だか有無を言わせぬ圧力を感じた。



結局、私はヨーデルのパートナーとして彼に手を引かれ、食事会を楽しんだ。
並んだ料理の取り方、食べ方や、初めて会った人への挨拶の仕方、声を掛けられたときの対応。色々な事を彼は教えてくれた。
私達の後ろに控えたフレンは何でもない顔をしていたものの、内心は気が気でなかったらしい。部屋に帰ってから話してくれた。

「無事に終わってよかったよ。本当に」

そう言って、フレンは深い深い溜息をついた。なんだか申し訳ない気分になり、「ごめんね」と謝った。

「謝る事は無いよ」

彼は笑いながら私の頭をくしゃくしゃと撫でた。

「フィナはとても行儀が良くて、お利口だったよ。ドレスも可愛くて」

「ヨーデルさんの言うとおりにしてただけだよ」

「それでも、とても様になってたよ。……お姫様みたいだった」

「ほんと?」

「うん。…………えーと。ね、フィナ」

彼の態度がぎこちなくなった。視線をうろうろと移動させ、見るからに不審だ。

「なあに?」

「えっと、ヨーデル殿下が、君をお嫁さんに、って話をしていたけれど……」

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