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「私にも、とても名前とは思えません」

「記憶が混乱しているようなんだ」

「そうですか……もしかすると、悪質なギルドに利用されていたのかもしれません」

「そうだな。此処には街道も通ってないし、事故の線も薄いと思う。ひとまず帝都に連れ帰ろう」

「それがいいと思います」

相談を終え、二人の視線が私に向いた。

「ねえ。君のこと、愛称で呼んでもいいかい?」

「いいですよ」

彼らに馴染みの無い名前を強要するより、呼びやすい名で自由に呼んでもらった方がいい。

「ありがとう。えっと……フィナ、なんてどうだろう?」

「可愛いです」

そう言うと、彼は嬉しそうに笑った。

「じゃあフィナ、これから僕たちは帝都に向かうんだ。一緒に行こうね」

「分かりました」

「ふふ。フィナは小さいのに、敬語が使えて偉いね」

発言の意図がつかめず、今度は私がぽかんとした。私の年で敬語なんて普通だ。若者の言葉が乱れている!なんて報道を真に受けてしまっている人なのか。それとも、単にバカにされているのだろうか。彼の爽やかな笑顔に、そんな影は全く見えないのに。

「その服は動き辛いだろう? ちょっと待ってくれ」

そう言われて初めて自分の服装を確認した。
制服の、白いブラウスが一枚だけ。しかもその裾がとても長くて、足を覆い地面についてしまっている。
逃げようとした時に引っ掛かったのは、ブラウスの裾だったのだ。
謎が解けたと同時に衝撃が走る。明らかに小さくて短い、私の手と足。
立ち上がって全身を確かめる。地面が異様に近い。身に着けているのは本当にブラウスだけだ。

縮んだ。
コナン君のように小さくなってしまった。
体は子供、頭脳は凡人!その名は……

「フィナ、どうしたんだい?」

「なんでもないです」

「そう。何か気になることがあったら、遠慮なく言ってくれ」

彼らの過剰なくらい優しい口振りは、子供に向けてのものだったのだ。
ただただ驚きで、悲しみや絶望といったマイナス感情は出てこない。
生きている幸せを実感したばかりで、大抵の事は流せる精神状態だったのが幸いしたのだろう。
落ち込むどころか、手厚いサポートが受けられてラッキー、とまで思い始めていた。

「ほら、着替えだよ。僕のお下がりなんだ。ごめんね、今はこんなものしかなくて」

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