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口から出てきたのは、我ながらメチャクチャな説明だった。自分でもよく分からないものを説明するのだから当然かもしれない。真面目に耳を傾けてくれるフレンに、頭が下がる思いだった。
病気かもしれない、という前置きに彼は顔を蒼白にし、私に詰め寄った。「どこか痛むのかい!?熱は!?」と私の額に手を当て、肩から腕をぺたぺたと触る。次に、『胸がきゅっとして、フワフワして、幸せな感じもする』と説明すれば彼は首を傾げ、「でも熱はないね」と言った。そして、『胸が痛いような感じになる。とにかく、変』と総括すると、難しい顔で黙り込んでしまった。
声をかけると「ごめんね」と微笑んでくれるが、すぐまた考え事に戻ってしまう。
少し、彼に相談した事を後悔した。これでは彼の悩み事を大きなものにしてしまっただけだ。
今更だが、病気じゃないかもしれないという方向で話を終息させようと息を吸った。

「ねえ、その『変な感じ』は今もするのかい?」

私が声を出す前に、彼の質問が飛んできた。

「うん」

「いつもするの?」

「ううん」

「なら、どういう時にするのか、思い出せないかな?」

私を見る彼の目には、確信のような光が宿って見えた。彼は既に私の症状に対する心当たりがあって、そして、何か特定の答えを待っている。そんな気配がした。
正直に言うべきかどうか迷った。だって、まるで彼が原因のように聞こえてしまう。

「誰かの近くにいる時や、誰かの事を考えている時だとか」

彼の表情は真剣で、少し怖かった。
そこまで分かっているのなら、そこに当てはまるのは誰なのか、彼にも予想がついているのだろう。そう思い、口を開いた。

「フレンと、いるとき」

彼が一瞬だけ固まった。そして硬かった表情に段々と喜色が滲んでいく。目を輝かせ、頬を微かに紅潮させる。と、顔を片手で覆って隠してしまった。

「そう……そっか……そうなんだね」

彼の喜びは半端なものではないと容易に想像できた。
予想していなかった反応に、私の鼓動は早まった。
喜ぶ、という事は悪い病気ではない。それは確実だ。それなら、一体何だったのだろう。
じっと言葉を待っていると、彼は手を下ろして視線を私に向けた。口元に優しい微笑を湛えて。

「……安心して。それは、病気じゃないよ」

「そうなの?」

彼は「ああ」と頷き、目を細める。

「その胸の『変な感じ』は、フィナが人を好きになったから……恋をしたから、起きたものなんだ」

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