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「おはよう。気分はどうだい?」

見知らぬ男性が私に笑いかけた。彼の明るい金髪に目が釘付けになる。
外国人だ。そう判断するなり、脳がすぐさま逃走コマンドを選択した。すぐに起き上がって走り出そうと足を踏み込む。すると、何かに引っ掛かって私は地面に突っ伏した。

「大丈夫かい!?」

「いたい……」

中途半端に出した腕を、地面に打ち付けてしまった。痛くて手でさすっていると、先程の外国人が私の腕を覗き込んだ。

「見せて。……血は出ていないけど……痛いかな?」

此処でようやく、彼が発しているのは日本語だと気付いた。私を怖がらせないよう、とても優しい声音で話してくれているのが分かる。
逃げようとした自分が恥ずかしくなった。彼は純粋に私の心配をしてくれている。
大丈夫だということを伝えると、彼はまた優しい笑顔を私に向けた。
整った顔立ちで、目が海のように碧い。ずっと見ていたいくらい綺麗な瞳だが、会って間もない男性の顔を凝視できるほど、私の根性は図太くない。
彼から目を逸らすと、自分が座っている芝生が見えた。途端に今までの記憶が蘇る。
私は、空から落っこちたんだ。

校門を出たところで穴に落ちて、空中でヘンテコな動物に会って、助けてもらえるかと思ったのに結局そのまま地面にまっ逆さま。
奇跡だ。今こうして地上にいるのに、生きている。

急に、今空気を吸っていることや地面に座って冷たさを感じていること、人と話していることがとても特別な事のように感じた。

「どうしたの?」

再び心配そうな声が尋ねる。親切な人だ。これ以上私のことでこの人の手を煩わせるのは避けたい。お礼を言って、早く帰ろう。
そう思って顔を上げた。働き始めた頭が、無意識に周囲の情報をかき集める。
朝方を思わせる白い日光。近くに森が見えて、周囲には金髪の人以外にも人がいる。馬のような動物の世話をしていたり、それぞれ雑談していたり、自由に過ごしている。驚きなのは、ここにいる人々が着ている服だ。見たことも無い、青い鎧のような服装。顔をすっぽりと隠す冑を持ってる人もいる。よく見れば、目の前の金髪の男性も同じ鎧のような服を着ていた。

「驚かせてしまったかな。僕は帝国騎士団のフレン・シーフォっていうんだ」

自分自身を指で指しながら彼は言う。私が目を合わせたのを確認して、二の句を継いだ。

「君の名前は?」

「……○×△□」

「えっ?」

彼は私の名前を聞いて、きょとんとした。そんなに変な名前だろうか。

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