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「フィナ、フィナはフレンの事、どう思います?」

エステリーゼが、やたらと瞳を輝かせて尋ねてきた。

「……どうって……」

曖昧すぎて、どういう方向の回答をすればよいのか分からない。
飲んでいたミルクをロココ調テーブルに置き、エステリーゼに向き直った。
この世界のミルクは普通に牛乳の味だった。なので、彼女の部屋に遊びに来るたびに出してもらっている。でも、一番欲しいお菓子はめったにもらえなくなってしまった。
フレンがエステリーゼに、そうするようお願いしたからだ。
私のことを考えてくれるのは嬉しいけれど、余計な事をしやがって、という憎らしい気持ちが拭いきれない。
甘いお菓子は全ての子供に元気と希望を与える存在なのに。彼はそれを分かってくれない。
今日もフレン小隊はお城の警備をしている。あそこの白い扉を開ければ、フレンが立っているはずだ。
答える様子の無い私をみかねて、エステリーゼは「好きです?嫌いです?」と極端な選択肢を提示した。
多分だが、「お父さんの事好き?嫌い?まあどうして?」みたいな、定番の雑談がしたいのだろう。
それなら構える必要は無いと思い、素直に「好き」と答えた。
向こうの世界でヘタに異性の事を『好き』なんて言ったら、あっという間に噂が広がってしまう。
その手のことが好きな人たちで勝手に盛り上がって、聞いてもいないのに「○○は××が好きなんだってさ〜」なんて失恋確定情報を嬉々として報告してくるのだ。
そんなこと、こちらは聞きたくないのに。

「それはどんな感じの“好き”です?」

予期しない突っ込んだ質問に、あっ気にとられた。
もしや、彼女も恋愛話が好きで、そういった意味での好き嫌いを尋ねていたのだろうか。
少しムッとした。彼女は向こうの『その手の人たち』のように、無神経では無いと思う。でも、私を噂話の出汁にしようとしている様に感じて、気分がよくなかった。

「フィナには難しいでしょうか」

私の変な顔は、質問が難しい所為だと思ったらしい。彼女は悩む仕草を見せ、

「そうですね……フレンといると、どんな感じがします? 幸せな気持ちになるとか、楽しいとか」

それは、考えた事がなかった。
変な質問だと思いつつ、頭の中にフレンの顔を思い浮かべてみた。
彼は私を見つけると、いつも優しく微笑みかけてくれる。頭に浮かんだフレンも、こちらを向くと目を細め、ふんわりと微笑んだ。
途端に、体がぽうっと熱くなった。胸の真ん中から熱が出て、それが全体に伝わるのだ。なんだか恥ずかしいような気持ちになる。

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