ドラマ1

※ドラマパロディ……小説じゃないです。ごめんなさい


【ドラマ】
――三巻第18夜。後……
『カットーーー!』

口々にお疲れさま、の掛け合いが聞こえる某スタジオ…ドラマ、D.Gray-manの撮影は順調に行われていた。本日は18夜ラスト…Noahと呼ばれる集団-家族-の、クランクイン後初の顔合わせであった。
全体的には撮影がはじまってすでに1ヶ月がたっていた。これが放送されるのはだいぶ先だが…モチベーション向上の為に、撮影は諸処諸々ランダムに行われていた。
顔合わせ、挨拶、劇的な登場シーンが終わり
肌色を黒くメイクされた役者たちはぞろぞろと楽屋に戻っていく。



ロード「おっつー。てぃっきぃ(役名)♪久々にいっしょのドラマだねぇ」

マネージャーから荷物を受け取り、楽屋に向かっていた男に、少女とも少年とも言えない容姿のロード(役名)が声をかけた。


ティキ「よぉ、ロード(役名)、久々。相変わらずハイテンションだな(笑)……そいや…キョーダイ役久々だな」


ティキ(役名)は腰に抱きついたロード(役名)に足を止めた。


ロード「オーラ♪そうだねぇvvボクたち顔立ち似てるから、って理由だけでしょっちゅうキョーダイやってるもんねぇ。……良い迷惑(ぼそり)」

ティキ「聞こえてますよロードさん」

ロード「ボク、ティッキー(役名)と共演のドラマ楽しみにしてんだよぉ?……からかえるし(ぼそり)」

ティキ(役名)「フォローになってないけど。本音でまくりだけど」


ロード「えへへ(かわいく笑い)」


ティキ「千年公(役名)みたいに誰でもその笑顔みて許してくれると思うなよおまえ。サンドイッチの具が全部からしに変わっていたとき、怒ったろ。オレだって怒るときは怒るんだっつの」


ロード「何の疑いもなく誰かにとられることを厭い一口で食べちゃうがめついティッキーがいけないんだよぉ。…てかティッキー怒っても怖くないしぃ……むしろさらにいじめたくなる(ぼそり)」

ティキ「お前どんだけSなの」


ロードを引きずったまま、ティキは楽屋までやってきた。ノブを掴んで回す。
へばりつくロードを見下げ、着替えるから剥がれるように言葉少なく手を揺らした。


ロード「次なんかの仕事あんのぉ?」

ティキ「雑誌のインタビューだと」

ロード「ふぅん?」

ロードは興味なさげに相づちする。

ロード「ぁ〜そういえばぁ。この前渋谷の駅でティッキー(役名)のポスターみつけたよぉ。なんか見ちゃいけないもの見ちゃった感じだったぁ。ティッキー(役名)水浸しだしさぁ。ただのポスターなのに18禁みたいだったよぉ(笑)」


ティキ「そりゃどぉも。よく盗まれるんだと。なにに使われてんだか(笑)」

ロード「ボクの目の前でも40台主婦が盗んでいたよぉ。ティッキーもてもて。おばさんキラァ(笑)」

ティキ「嬉かねぇよ(かなり/笑)」

ロード「ぁ、OLっぽい人ももってかえってたよぉ。よかったねぇ(笑)
……ティッキーは本当に仕事の好き嫌いあるよねぇ。昔は何でもしてたのに、…………売れてるからって調子のってんじゃねぇよ(ぼそり」

ティキ「…おまえ、日に日に口が悪くなるな…オレに対してだけ(笑)…別に選り好みしてねぇよ。面白くなさそうなもんは避けてるだけ」

ロード「それが贅沢っていってんのぉ。もうみんなあまちゃんだなぁ、ティッキーには。あまあまだよぉ」

未だくっついて離れないロードにティキはそのまま楽屋に入り、鞄を探ってレモン色のあめ玉を取り出した。 ロードとはティキが役者を初めて以来の長いつきあいだ。
今回D.Gray-manで一緒になる-それも撮影の重なりそうな役で-がわかっていたので準備していたものだ。
ロードと言えば売れっ子天才子役として名高い。天使のような笑顔だと思えば、力強く射止めるような瞳の力。どんな役でもこなす演技の幅。小.中学生の中ではカリスマとも言われていた。幼い頃から芸能界にいた為、幅広い交友関係があるものの、長い経験からか表裏が激しい。普段のふわふわした天使のような笑顔は表の顔。裏は毒舌家のわがまま姫だ。
……ティキはその裏の顔を知っている数少ない友人であった。随分年は離れているが…

ティキは飴をロードのつんつんに立った髪の中に落とした

ティキ「これやるから今日は帰りなさいよ。次の撮影の時は遊んでやるから」

ロード「しょうが、ないなぁ〜……♪」


年は随分下だか、長年大人の世界にいるためかロードはかなり大人びていた。
ティキも最初は天使の笑顔に騙されていたふしがある。
しかし彼女の本質は、あの誰もを射抜くような瞳が物語っていた。
興味本位でいつ泣いてもおかしくないキャラのロードをちょい、とつついてみた。
……覗かせいたのは、今のような小生意気な面。
--今まで見抜いた奴なんか、殆どいないんだよ?ロードはご機嫌で答えた。
自分より長い時間、この世界で暮らしている彼女の目にかなったのだ、ティキは。
それ以来の、腐れ縁。


ロード「しょうがないなぁ…ボクの行動を見越して飴を用意していたティッキー(役名)のずる賢さに免じて今日の夜遊びは許してやろぉ♪」


ぱくりと飴をなめて、満足気に件のエンジェルスマイルをさらすロードにティキはまなじりを緩めてた。

今や、侮れない人間のベストファイブにもはいるほどの友人だ。
ロードは人を見抜く力に長けていた。嘗めてかかっては痛い目をみる。
--ティキはあめ玉をやっただけでは帰らぬロードを横目でみた。深追いは仕事と飴に免じてくれたようだが、まだ満足は…してくれないみたいだ。
しょうがない、と肩をすくめる。


ティキ「なにが聞きたいんだ?……一つぐらいは、答えてやるけど」

ティキは燕尾服をハンガーに引っ掛けながら、座敷にすわり楽屋扉にむいたまま足をばたつかせるロードに言った。

ロード「あれぇ、そこまでわかってたの?」


ティキ「当たり前だろ」

鏡に向かい、グレイのメイクを用意されたメイク落としで拭いながら、ティキはわざとらしくため息を吐き出す。
夜遊びに付き合うことは多かれ、仕事にいくのを邪魔されることなんか今までなかった。
ロードもプロなのだ。それも、星が三つもつくほどの……演技にプライドをもったアーティスト。

ロードは上体だけ振り返り、にしゃり、と笑った。


ロード「……なんで急に、ファンタジードラマにでる気になったのぉ?」


大きく、そして強い光を宿した瞳がティキを写す。
鏡越しにそれと三秒ほど見つめ合うと、ティキはふいと視線を落とした。


ティキ「きまぐれ」


ロード「ふぅん?」


ティキ「本当だぜ」


ティキはメイクを落とし終えて顔を洗う。


ロード「ボクはてっきり、なんか惹かれるモノでも見つけたのかと思ったぁ」


くすくす、と笑いながら細い腕を伸ばして、ロードは畳に寝転がった。
まだ食いつくとは、ティキの答えが不満らしい。そりゃそうだ。こんな曖昧な答えで納得するわけがない……ティキはわかってはいた。

ロード「ボクはぁ、やっと素で出来る役をやらせてもらえることになったからなんだけどねぇ。今まで事務所がうるさかったからさぁ。わかる?ボク以外にこの役はできないんだよぉ。それを見せつけたいわけ」


にこにこと明らかすぎる機嫌の良さが、ティキにとったら全て吐けよ、と脅迫されているようなもんだ。
…一つ暴露ですむのだろうか、これは。


ロード「ボクねぇ…このドラマ、成功させたいの」

ティキが着替えをはじめると、ロードはわかってましたとばかりに顔を俯かせた。
こんなことで悲鳴するほどもう中身は若くないし、女性に大人気の色気を保有するティキをみても恥ずかしくもなんともない。
しかし…顔を俯かせ、か細く力無くこぼれた真剣な言葉が吐き出された……

……ティキは、ローライズのズボンを履き終えると、ロードの目の前に腰を落として、セットされたままのつんつんの髪の毛を摘んだ。

ロードが顔をあげる。……どんな状況でも自信のある態度を忘れないロードの…あまりに珍しい、気弱な表情。


ティキ「……オレもだ」


--オレにとっても世界の広がりを確かにする作品なんだぜ?


……なにかを隠したかったわけじゃない。真剣だからこそ、なにを語ればよいかは迷っていた。



ティキ「原作もさながら、脚本もいい。飽きさせない展開も配慮している…特殊メイクや映像効果の斬新なデモテープにはかなり気分が高揚した。ほぼ一年ぶりのドラマだ…オレに言わせれば、これは復帰作になる。捨てゴマになんかするかよ」


ティキはあまりに淡白な理由をあげていった…しかし、これで誰よりも納得するのは……同じ世界の人間……利益主義の利己的な理由こそがもっとも納得いく……ロードである。

ティキ「ほら、起きろよ」

ロード「……ん」


ロードのわきに手をいれてティキは小さく軽い彼女を起こした。

納得はしたものの、眉を下げたままのロードにティキは微かに唸った…たまに真剣になると恥ずかしいが…彼女の前では作らずにいることができた。
同じ土俵の人間……

お前がいるドラマだ。成功しないわけがない、とは思うもそれは言わずもがな。…ロードのお目かねにかなったのだ、自信はあるのだろう。
ただ…仲間だって重要だ。無論、ロードはティキを信じていないわけではない。

……ロードが違和感を感じるのは、下手もない。
……ティキはもとモデルあがり。今までの役にファンタスティックなものなどなかった。


ティキ「…気になる奴がいるんだわ」


ティキはロードの目を見たまま、普段のふざけた顔…それでも、その顔が雑誌の表紙などを飾っているのだが…から、知れたものの少ない真顔になる。


ティキ「台本の配役欄に…そいつの名前があった。本音を言えば台本をみたきっかけはそれだ。目の前に積まれた出演依頼は全部読んでいらんねぇからな」


ロードはきょとんとする。


ロード「それで…気紛れぇ?」


ティキ「そ。でもそれだけで簡単に選んだりしねぇよ。…きちんと運命感じたから今ここにいるんだ」


にや、と口端を持ち上げ、不敵に笑った。


ロードはしばし黙り……そして目を座らせた。




……にやり。


ロード「………くさいよぉ、ティッキぃ」


ロードは、ティキの本音に、いつもの飄々とした調子で破顔した…ティキはいくらかほっとする。いくら強かなロードの性格をしっていようと、泣きそうな顔にはひどく弱い。


ロード「凄いねぇ、そいつ。ティッキーを動かしちゃうなんて」

ティキ「そうか?」

ティキは着替えおえ、荷物の中から帽子を取り出してかぶった。


ロード「頑固で他人に興味ないってことをもう少し自覚したらぁ、ティッキーはぁ」


ロードはティキの腕から抜けると、床に降りた。

つまさきをトントン、と鳴らして、後ろに腕を組んで得意げに笑う。


ロード「やっぱりこのドラマ、すっげぇ楽しみぃ。ボクの目に狂いはなかったねぇ」


軽い体を靡かせてロードは扉に寄りかかった。顎を引いてティキをみつめる。


ロード「…実はボクも運命感じちゃってんだ…なんか、引力ある奴ばっかなんだもん♪」


ロードが、初番は出番がないこのドラマの撮影に頻繁に顔をだしていることは知っていた。……ロードはあまり、一つのドラマ・舞台に固執しないタイプだ…今まででてきた作品数はもう両手に収まらないのだから当然だ。


ロード「ボクねぇ…ティキの名前が配役欄にあった時まじでうれしかったんだぁ…」

しみじみ、とロードは穏やかに語る。


ロード「ボクらの運命がねぇ…何か変わる予感がするのぉ」


ふやけた顔をするロード。
リアリストよりのロードは、天性の直感を大事にしようも、夢見がちすぎることをあまり語ったりしない…

全部本心なのだ。


ティキ「……楽しみだな」

ロード「うん♪」


目を閉じて、二人は密やかに笑った。


……運命が、回る音がしていた。




***

いつかやってみたかった、ドラマ*D.Gray-manネタ









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