女の子だって戦っている

「それじゃあ今日はもう終わりねー」

 最後のデザートプレートが空になって数分、部長の一声でところどころで明るい声で湧きだっていた教室が一致して片づけを始めた。
 今日のメニューは、ダイエットにも最適★鮭のリゾットとコンソメのスープ仕立てのムニエル。同じくコンソメのマッシュルームのスープに桃のゼリー。
 材料は皆で買出しに行って、分担して調理するから十時から開始される活動は一時には終了した。

「ね、ラビ!さぁ、買い物に都内までいきましょうっ!」

 フリルのエプロンの後ろリボンを取り合いながら、リナリーがとっても楽しそうにラビを誘った。


【女の子だって戦っている】


「りーなり〜?」

 学園から一時間掛けてでてきた都会は・・・人が多かった。
 学園だって充分人は溢れているけれど、街は人だけじゃなくて色々なものも溢れていて騒がしい。
 次から次へとデパートを渡り歩き、パルコ水着のセールがやっていれば今更ながら二人で試着のしあいっこをしたり、リズりラの新作ワンピースがあれば立ち止まって店の奥まで物色をはじめ…エンドレス。

「もうギブアップ?しょうがないなあ」

 お互い違うショップの袋を二・三個手からぶら下げながら、ラビはへにゃりと頭を下げたのは買い物が始まってから三時間後。
 
「ぁ、此処のお店寄ったらお茶でも飲もうか!」

 手を引いてラビを連れまわしていたリナリーが、ふと見上げたお店を指差すをにっこり笑う。
 少しきらきらした瞳力に何事かを思えばそこはランジェリーショップ。

「・・・遠慮します」
「もー!何恥ずかしがってるのよ!女同士なのにっ!」

 項垂れたまま過ぎ去ろうとしたラビの腕を両手で引っ張ってリナリーが腰を落とした。
 頑として動かないつもりだ。

「・・・ぇー、だってさー!」
「ラビはどうせ、通信販売とかで買っちゃうんだろうケド、たまにはこういうところで買ってみたらどうかなーって思ってたの!」

 裸の付き合いだってしている間柄、そういう女の子女の子した話題には触れていたりするけど。
 友達を引き連れて来るところでもないだろう。
 呻るラビにリナリーはダメ押しをする。

「ね?私も欲しいものあるし」

 そういわれればラビに逆らう術はない。
 何処か遠望した店の可愛さに、眉を寄せて足を進めた。

「これ、可愛くない?」

 リナリーの手の中にあるものは全て可愛く見える。もともとカジュアルな視点では趣味が似ているところもあるのだが、彼女の手の中にあるから、ということが一番の要因なのだが。
 うん、と頷くとはい、と手渡される。

「へ?」
「試着」

 にっこ、と断りが入れられない笑顔。
 柔らかい素材の、淡い桃色の下着。隅や胸元には紐のリボン。
 今まで穿いたこともない。

「ぇ、ええええええ!?」
「ラビになら絶対似合うって!」
「む、無理さ!」
「試着ぐらい、無料だからっ!」

 いやいやと首を横に振ってもリナリーは聞きいえれてくれなかった。
 試着室に押し込まれて、狭い部屋の中で改めて丸めていたランジェリーを広げると、身近に迫った逸れは生々しく可愛らしく、艶かしい。
 自分にはほど遠かったはずなのに。
 試着したと嘘とつけば、気付かれないだろうか。

「試着終わったらいってね!見たいなっ!」
「(ぇえええええ)」

 逃げ場が無い。
 カーテンで遮られているにしても下着一枚で公共の場にいるかと思うと、恥ずかしさの頂点なのに。

「似合うじゃない!」

 リナリーはお構いなしだ。


 その後、これ以上ないってほど次々と試着を命じられ、もう勘弁してください、と更衣室の中で三つ指を立てると仁王立ちのリナリーがやっと満足してくれたのは首を立てに振った。
 全体的に薄い色なところがまだ救いだった。派手なものとか、そんなの恥ずかしくて付けることは出来ない。
 だって自分には、

「たまには、可愛い下着つけているところ見せた上げたら?ティキ先生に」

 自分の体を知っている人がいるのだから。
 ティキという恋人が。

「・・・・ほぁああああああ?!」
「そこで発狂するってどういうこと?!」
「ま、ま、ま、ますます無理さ!」
「でも、喜ぶと思うわ」
「喜ばしたくなんかない!」
「それに、モチベーションも自信もあがる」

 試着済みの下着を胸元に抱えたまま思いっきり首を横に振り続けていたラビが、ピタリと止まる。

「・・・じ、し・・・ん?」
「気持ちの問題だよね」

 今日、街で見かけたどんな黒髪の人よりも長くて光っていたリナリーの髪がさらさら音を立てて横に揺れる。
 綺麗だ。女の子の髪の毛はこうでなくっちゃとリナリーを見るたびに思う。
 自分を省みても。

「付けている下着に負けないぐらい、自分もしっかり立っていなくちゃ、って思うの。私は」

 そこにいる彼女が、自分と同じ女の子のはずなのに、どうしてそんなに可愛いのか、ずっと次元が違うんだと思ってたのに。
 ラビはぎゅっと手の中にある柔らかい布を握り締めた。
 あの、隅から隅まで磨きかかっているような男の隣にいるとき、自然な自分が自然じゃないと思うときがあった。

「ぅ・・・」
「私、それとお揃いのもの持ってるんだ!今日はそっちの色違い買おうと思うの」

 ラビの手の隙間から見えるランジェリーを一つづつ指差して、リナリーが見上げてきた。
 買い物と一つするだけで、努力の違いが見えてしまう。
 そこから言い訳をつけて目を背けていたのは、ほんとのこと。

「・・・お揃い、に、するさ?」
「うん!」


 女の子って、結構気合がいる。


 ケーキを食ようと喫茶店を探して街中を歩く二人の手の中には、先ほどより一つずつ小さな紙袋が増えていた。




0814


女の子編クライマーーークス!!!

これを最後に書きました。つ、疲れた・・・内容が決まっていた分かきやすかったですが、なかなか・・・
こういう展開のものを書くのが始めてなので、最初抵抗があったのですが(女体化自体に・・・)書き始めると楽しかったです。(笑)
女の子でしか書けないなのだから絶対に書きたかったんです・・・!!

リナリーが好きです、あたい・・・!

ラビは、巨乳か貧乳から、ご想像にお任せ・・・!(ティキぽんはきっとどっちでも良いよ!だって、ラビだもの!笑)






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